なぜ優勝経験もありセリアAもあるイタリア代表は、3度もワールドカップ出場を逃すほど弱体化したのか?
結論を先に言えば、イタリア代表は急に弱くなったのではない。 2018年、2022年、2026年のワールドカップ予選敗退は、同じ構造問題が形を変えて繰り返された結果だ。強いリーグを持っていても、代表に必要なタイプの選手が継続して育ち、トップレベルの出場時間を積めなければ、代表は安定して勝てない。
しかもイタリアは、2021年7月11日にUEFA EURO 2020を制している。つまり「タイトルを取れる力」は一度は示した。それでも2022年3月24日に北マケドニアに敗れ、2026年3月31日にはボスニア・ヘルツェゴビナにPK戦で敗れて3大会連続で本大会を逃した。ここに、この国の問題のややこしさがある。
- 2018年はスウェーデンとのプレーオフで敗退し、1958年以来の不出場になった
- 2022年はEURO王者のまま、プレーオフ準決勝で北マケドニアに敗れた
- 2026年は大会が48か国に拡大し、UEFA枠も16に増えたのに、それでも出られなかった
- 問題の中心は「セリエAの格」ではなく、育成と出場機会と代表の役割継承がつながっていないことにある
ここがポイント: イタリア代表の失速は、1人の監督や1大会の不運では説明しきれない。育成の設計、若手の実戦機会、代表の中軸の更新失敗が重なっている。
まず何が起きたのか
イタリアは2018年11月ではなく、2017年11月13日のスウェーデンとのプレーオフ敗退でロシアW杯出場を逃した。これは1958年以来の不出場だった。
その後、ロベルト・マンチーニ体制でスタイルを立て直し、2021年7月11日にEURO 2020を制覇する。UEFAの試合分析でも、イタリアは中盤で主導権を取り返し、試合の流れを自分たちに戻せるチームだった。
だが、その完成形は長続きしなかった。2022年予選ではスイスに勝ち切れず、北アイルランドとも引き分け、最後はプレーオフで北マケドニアに0-1。さらに2026年はグループIでノルウェーの後塵を拝し、プレーオフ決勝でボスニア・ヘルツェゴビナに敗れた。
EURO優勝と3大会連続予選敗退が同じ時期に並ぶのは、偶然ではない。一度できあがった強い代表を、次の世代へ受け渡せなかったということだ。
弱体化の核心は「リーグの強さ」と「代表の強さ」が別物だったこと
セリエAは依然として欧州有数のリーグだ。だが、リーグが強いことと、その国の若手が代表級に育つことは同義ではない。
若いイタリア人がトップで十分にプレーできていない
この点を数字で示したのがCIESの2025年調査だ。50のトップリーグを対象にした集計で、セリエAにおけるU-21の自国代表資格を持つ選手の出場時間割合は1.9%。欧州5大リーグの中でもかなり低い水準だった。
この数字が重いのは、単に「若手が少ない」という話ではないからだ。代表で必要になるのは、育成年代の有望株ではなく、
- 高強度の試合で前進を作れるMF
- 最終ラインを統率できるDF
- 少ない好機を決め切るCF
といった、役割を背負った選手たちだ。国内リーグでその時間を積めないと、代表では経験不足が一気に出る。
FIGC自身が育成の問題を認めている
イタリアサッカー連盟(FIGC)は2026年3月18日、ユース年代の新しい技術プロジェクトを発表した。そこで強調されたのは、イタリアでは戦術や結果を急ぎすぎ、個人技術の育成が後回しになってきたという反省だ。
これはかなり大きなメッセージだ。つまり連盟自身が、問題を「代表監督の人選」だけではなく、5歳から12歳の育成設計にまでさかのぼって見ている。
セリエAが存在しても、育成の入口でボール技術と判断の反復が不足し、その後にトップでの実戦機会も薄い。これでは代表の厚みが戻りにくい。
EURO 2020の成功が、逆に構造問題を隠した
EURO 2020優勝は本物だった。ただし、その成功は同時にイタリアの弱点を覆い隠した面もある。
あの優勝は「完成した主力」が噛み合った大会だった
UEFAの振り返りでも、決勝でイタリアが勝った理由として中盤の主導権回復が挙がっている。ジョルジーニョ、ヴェラッティ、バレッラのように試合のテンポを管理できる中盤、そしてボヌッチを軸にした最終ライン、ドンナルンマのPK戦での強さが噛み合った。
つまり、あの優勝は土台の弱いチームが勢いで勝ったのではなく、経験と役割分担が極めて明確な完成品だった。
問題は、その後だ。
- ベテランCBの後継を安定して作れなかった
- 中盤のゲーム管理役を同じ精度で回せなかった
- 前線で継続して点を取る軸が定まらなかった
2022年予選でスイス相手の勝ち切れなさや、北アイルランド戦のスコアレスが響いたのは象徴的だった。押し込みながら決め切れない、優勢でも1点を取り切れない。この傾向は2026年の敗退にもつながっている。
2026年の敗退は「拡大W杯でも届かない」現実を突きつけた
2026年大会は48か国制になり、UEFAの出場枠も16に増えた。それでもイタリアは出られなかった。
これはかなり深刻だ。以前なら「欧州予選は厳しい」で片づけられたが、今回はその言い訳が弱い。実際、UEFAの結果一覧ではイタリアはグループIでノルウェーに後れを取り、プレーオフでも本大会行きを決め切れなかった。
2026年3月31日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦は、ただのPK負けではない。本大会への最短ルートを自力で取れず、最後の一発勝負に自分を追い込んだ時点で、すでに脆かったという見方のほうが正確だ。
立場ごとに見ると、論点はかなり一致している
ここは意外と重要だ。見解は完全には同じではないが、向いている方向は似ている。
連盟の見方
FIGCは育成再設計を前面に出し、技術育成と現場の統一方針を強めようとしている。問題を長期構造として扱っている。
データ分析の見方
CIESの数字は、若い自国籍選手がトップリーグで十分な時間を得ていない現実を示した。育成とトップ昇格の細さを可視化している。
外部メディアの見方
2026年の敗退後、海外報道では監督交代論だけでなく、若手不足や草の根の弱体化まで含めたシステム不全として語られている。短期の采配ミスだけでは説明できない、という点では一致している。
日本の読者がこの話から学べること
日本から見ると、「セリエAがあるのになぜ」という驚きが先に来る。ただ、このケースが示すのは、強いリーグを持つことと、強い代表を作り続けることは別の仕事だという事実だ。
日本代表やJリーグを見る上でも、注目すべきなのは次の点だ。
- 若い国内選手が、どのポジションで実戦時間を得ているか
- 代表の中軸が抜けたあと、同じ役割を誰が引き継げるか
- 結果先行の育成になっていないか
イタリアの問題は「名門国でも落ちる」という一般論では終わらない。育成の入口、リーグでの出場機会、代表の役割継承が切れた瞬間に、EURO優勝国ですらW杯に3大会続けて届かない。 次に見るべきなのは、FIGCの改革が本当にセリエAの出場時間と代表の人材循環にまでつながるかどうかだ。
参照リンク
- UEFA EURO 2020 final: who was in it, when and where was it?
- Italy 1-1 England, aet (3-2 on pens): Donnarumma the hero as Azzurri win EURO 2020
- EURO 2020 final: where the game was won and lost
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