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なぜ東京ヴェルディは今季躍進しているのか?2025年との違いをデータと起用法で読む

なぜ東京ヴェルディは今季躍進しているのか?2025年との違いをデータと起用法で読む

東京ヴェルディが変わった一番の理由は、守備のチームから攻撃のチームへ別物になったからではない。2025年に勝ち切れなかった接戦を、今季は得点力とPK戦対応で勝点に変えていることが大きい。

2026年4月12日時点で、東京Vは明治安田J1百年構想リーグEASTグループの4位。10試合で3勝、PK勝ち3、PK負け0、4敗、勝点15にいる。2025年のJ1では38試合で17位、得点23、得失点差-18だったことを考えると、順位表の見え方は大きく変わった。

ただし、手放しで「強豪化」と言い切るには早い。10試合で13得点15失点、得失点差は-2。浦和レッズとの第10節も1-1からPK戦を制したが、シュート数は浦和17本、東京V7本だった。今の躍進は、圧倒しているというより、競った試合を落とし切らないチームになっていると見るのが近い。

  • 2025年:J1 17位、38試合23得点、41失点、得失点差-18
  • 2026年:EAST 4位、10試合13得点、15失点、得失点差-2
  • 大きな違い:得点ペース、PK戦での勝点上積み、途中出場組の得点関与
  • 注意点:失点は減っておらず、内容面ではまだ波がある
目次

何が起きているか:順位は上がったが、内容は「改善途中」

まず事実関係を整理したい。

Jリーグ公式の順位表では、2026年4月12日更新時点の東京VはEASTグループ4位。上には鹿島アントラーズ、FC東京、FC町田ゼルビアがいて、下に川崎フロンターレ、浦和レッズ、水戸ホーリーホックなどが続く。

東京Vの成績は以下の通りだ。

年度・大会順位試合勝敗の内訳得点失点得失点差
2025 J117位3811勝10分17敗2341-18
2026 J1百年構想リーグ EAST4位103勝・PK勝3・PK負0・4敗1315-2

2025年の東京Vは、1試合平均得点が0.61点だった。J.League Data Siteのチーム別集計でも、38試合で23得点、シュート278本という数字が残っている。守備で粘っても、1点を取れずに勝点を伸ばし切れない試合が多かった。

今季は10試合で13得点。単純計算では1試合平均1.30点になる。大会形式も試合数も違うため単純比較には注意が必要だが、少なくとも「得点が重い」という昨季の課題は、序盤10試合ではかなり緩んでいる。

ここがポイント: 東京Vの今季の躍進は、守備の劇的改善ではなく、得点ペースの上昇とPK戦での勝点回収によって順位を押し上げている。

昨季との最大差は「1点を取る人数」が増えたこと

2025年の東京Vは、染野唯月が37試合5得点でチーム得点源の中心だった。一方で、チーム全体の得点は23点にとどまった。攻撃が特定の選手に寄り、相手に構えられた時に別ルートを作りにくかった。

2026年は、得点者の広がりが見える。

J.League Data Siteの出場記録では、4月12日時点で主な得点者は次の通り。

  • 染野唯月:9試合4得点
  • 吉田泰授:9試合3得点
  • 福田湧矢:6試合2得点
  • 松橋優安:7試合1得点
  • 齋藤功佑:9試合1得点
  • 山見大登:9試合1得点

染野が軸であることは変わらない。第10節の浦和戦でも74分に同点ゴールを決め、勝点獲得の入口を作った。

ただ、今季は染野だけではない。吉田泰授が出場時間328分で3得点、福田湧矢が297分で2得点を記録している。先発固定の主力だけでなく、途中出場や役割変更を受けた選手がゴールに絡んでいる点が大きい。

途中投入が「時間消化」ではなく得点手段になっている

浦和戦でも、東京Vは58分に宮原和也を下げて山見大登を投入し、85分には福田湧矢と吉田泰授を下げて熊取谷一星、稲見哲行を入れた。試合は1-1のままPK戦へ進み、東京Vが1-3で制した。

この交代だけで試合を支配したとは言えない。実際、シュート数では浦和が大きく上回った。それでも、ベンチから出てくる選手が攻撃の形を変えられるようになったことは、昨季との違いとして見逃せない。

2025年は「守って、少ないチャンスを待つ」色が濃かった。今季は、同じ接戦でも1点を取る選択肢が増えている。

PK勝ち3つが順位表を押し上げている

今季を読むうえで、百年構想リーグの大会形式も外せない。

東京Vは10試合のうち、PK勝ちが3つある。FC町田ゼルビア戦の2-2、FC東京戦の0-0、浦和戦の1-1をPK戦で勝ち切った。Jリーグ公式順位表では、これが勝点15という数字に反映されている。

通常のリーグ戦なら引き分けで終わる試合が、今大会ではPK戦によって勝点の差を生む。ここで東京Vは取りこぼしていない。

これは偶然だけで片づけにくい。

  • 90分で負け切らず、PK戦まで持ち込む
  • PK戦で3回とも勝ち切る
  • 直接の順位争い相手から勝点を削る

この3つが重なったことで、得失点差-2でも4位にいる。

「強い」というより「しぶとい」

ただし、PK勝ちが多いことは、同時に課題も示している。90分で相手を押し切る試合が多いわけではないからだ。

第10節の浦和戦は、東京VがPK戦を制した一方で、公式記録上のシュート数は浦和17本、東京V7本。コーナーキックも浦和6本、東京V2本だった。城福浩監督も試合後、日刊スポーツの報道で、前からの追い方やボールの奪い方に課題を残した趣旨のコメントをしている。

つまり、今の東京Vは完成形ではない。むしろ、内容が荒れても勝点を拾えるようになった段階だ。

起用法の変化:森田晃樹の10番と、若い得点源の増加

編成面でも、今季の東京Vは少し見え方が変わった。

2026年の新体制では、アカデミー育ちの森田晃樹が背番号10を背負っている。森田は10試合847分出場で、出場時間の多さからも中盤の軸であることが分かる。得点者としてではなく、チームのリズムと配置の基準点として重い役割を担っている。

その周囲で、染野、吉田、福田、松橋、山見らが得点に絡む。ここに昨季との違いがある。

2025年の得点構造は、染野の5得点、谷口栄斗と綱島悠斗の3得点、木村勇大と新井悠太の2得点など、全体として低い得点数の中で分散していた。分散しているようで、試合を決め切る厚みには届かなかった。

2026年は、10試合の時点で染野が4得点、吉田が3得点。短期大会とはいえ、前線とサイド、交代選手の得点が早い段階で出ている。

新戦力と若手が「序列の外」ではない

吉田泰授は背番号55で、今季ここまで9試合に出場して3得点。福田湧矢も6試合2得点。熊取谷一星、山本丈偉、仲山獅恩らも短い時間ながら出場機会を得ている。

これは、単に若手を試しているという話ではない。東京Vは勝点を取りに行く試合で、若い選手や新しい役割の選手を投入している。チーム内競争が、攻撃の選択肢を増やしている。

それでも不安は失点数に残る

躍進の裏側で、守備面にははっきりした宿題がある。

2025年の東京Vは38試合41失点、1試合平均1.08失点だった。2026年は10試合15失点で、1試合平均1.50失点。大会形式や対戦相手の偏りはあるが、少なくとも数字上は失点が減っていない。

特に気になるのは、負け方だ。

  • 横浜F・マリノス戦:2-3で敗戦
  • 鹿島アントラーズ戦:0-2で敗戦
  • 川崎フロンターレ戦:0-2で敗戦
  • ジェフユナイテッド千葉戦:2-3で敗戦

複数失点の試合がある一方で、浦和には3月14日に1-0で勝ち、4月12日にも1-1からPK勝ちしている。相手の強度が上がった時、試合の入りや被カウンター対応が安定するか。ここが上位定着への分かれ目になる。

城福監督が求める前線からの守備、ボールを奪った後の質、相手陣で時間を作る力は、まだ毎試合そろっているわけではない。得点力が上がったぶん、守備の粗さを覆い隠せている試合もある。

立場別に見る東京Vの評価

同じ4位でも、見る立場によって評価は少し違う。

公式データから見える評価

公式データで最も大きいのは、得点ペースの改善だ。2025年は38試合23得点。2026年は10試合13得点。昨季のままなら0-0や0-1になっていた試合で、今季は1点、2点を取れる場面が増えている。

一方で、失点ペースは改善していない。データだけで見るなら、東京Vは「堅守で上がった」のではなく、「得点とPK戦で勝点を積んだ」と整理するのが自然だ。

監督コメントから見える評価

城福監督の発言からは、勝利後でも内容に満足していない姿勢がうかがえる。浦和戦後の報道では、前からのチェイシングやボールの奪い方、そこから先の質に課題を残したという趣旨のコメントが紹介されている。

これは、チームの現在地をよく表している。結果は出ているが、監督の基準ではまだ足りない。だからこそ、短期的な順位だけでなく、プレーの再現性が次の焦点になる。

サポーター目線で見える評価

サポーターにとって大きいのは、接戦を最後まで見られるチームになっていることだろう。昨季は得点が遠く、1失点が重くのしかかる試合が多かった。今季は、先に失点しても追いつく、90分で決着しなくてもPK戦で勝つ、という試合がある。

ただし、失点の多さやシュート数で押し込まれる試合は不安材料だ。順位が上がっているからこそ、内容への要求も上がる。

今後の注目点:4位を守るには「90分で勝つ試合」が必要

東京Vの次の課題は明確だ。PK戦で勝点を拾うだけでなく、90分で勝ち切る試合を増やすこと。特に、失点を減らしながら得点ペースを維持できるかが重要になる。

今後見るべきポイントは次の3つだ。

  • 染野唯月以外の得点者が継続して出るか
  • 吉田泰授、福田湧矢らの得点ペースが一過性で終わらないか
  • 複数失点の試合を減らし、PK戦頼みの勝点から脱却できるか

2025年の東京Vは、守れても点が取れずに17位へ沈んだ。2026年の東京Vは、点を取る人数が増え、PK戦でも勝点を拾って4位にいる。

違いははっきりしている。だが、まだ完成ではない。次に問われるのは、得失点差がマイナスのまま上位にいるチームから、90分の内容でも順位に見合うチームへ進めるかだ。

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