スペイン国王杯獲得の久保建英、日本を代表するストライカーのまだ見ぬ可能性は?
レアル・ソシエダードは2026年4月18日、セビリアのラ・カルトゥーハで行われたスペイン国王杯決勝でアトレティコ・マドリードと2-2で引き分け、PK戦を4-3で制した。久保建英は後半43分から出場し、延長戦を含む終盤の時間帯でタイトル獲得のピッチに立った。
結論から言えば、久保の「ストライカーとしての可能性」は、典型的な9番に変わることではない。右サイドから内側へ入り、ラストパスとシュートの両方を選べる“得点に近いアタッカー”として、まだ伸びしろが残っているという見方が現実的だ。
- 国王杯決勝はレアル・ソシエダードがPK戦で勝利
- 久保は後半43分から出場し、延長戦までプレー
- 今季リーグ戦では2得点、チーム最多タイの4アシスト
- 課題は「決定機に入る回数」と「シュートで終える場面」の増加
- 日本代表やJリーグの育成文脈では、サイドアタッカーをどう得点源に近づけるかが焦点になる
何が起きたのか:ソシエダードがPK戦で国王杯を制した
決勝は立ち上がりから動いた。RFEF公式の試合記録では、レアル・ソシエダードは前半1分にアンデル・バレネチェアの得点で先制。アトレティコは18分にアデモラ・ルックマンが追いつき、ソシエダードは前半終了間際にミケル・オヤルサバルのPKで勝ち越した。
後半83分、フリアン・アルバレスが同点弾。延長戦でも決着はつかず、PK戦ではGKウナイ・マレーロがアレクサンデル・セルロートとフリアン・アルバレスのキックを止めた。最後はパブロ・マリンが決め、ソシエダードがタイトルを手にした。
久保はRFEF公式記録で後半88分からの出場とされている。先発ではなかったが、2-2のまま試合が重くなる時間に投入され、延長戦まで右寄りの攻撃と守備の役割を担った。
ここがポイント: 決勝の主役はPK戦のマレーロだった。ただし久保にとっては、チームのタイトル獲得をピッチ上で経験したことが大きい。評価すべきは「決勝で何点取ったか」だけではなく、復帰後の状態で終盤の緊張に入れた点だ。
「ストライカー化」ではなく、得点に近い右アタッカー化
久保を日本代表のストライカー候補として見るなら、まず言葉を整理したい。彼は中央で相手CBと競り合い、クロスに飛び込み続けるタイプのセンターフォワードではない。
今の久保に見える可能性は、次の3つに分けられる。
- 右サイドで受けて、カットインから左足でシュートまで持ち込む
- 内側のハーフスペースで受け、ラストパスと自分のシュートを選び分ける
- 試合終盤に守備強度を落とさず、カウンターの出口になる
この役割は、単純な「点取り屋」とは違う。相手SBを引きつけ、ボランチを外へ動かし、中央のオヤルサバルや2列目の選手にスペースを作る。そこに自分のシュートが加われば、相手は久保を止めるためにもう一枚を寄せざるを得ない。
数字が示す現在地
LaLiga公式のレアル・ソシエダード統計では、久保は2025-26シーズンのリーグ戦で19試合2得点。一方でアシストは4で、チーム最多タイに立っている。得点数だけを見れば物足りないが、チャンスメイク面ではチーム内で上位の役割を持っている。
同じ公式統計で、チームの得点上位はオヤルサバルが12得点、ゴンサロ・ゲデスが8得点。ソシエダードの得点構造は、中央のオヤルサバルと左・中央寄りのフィニッシャーに重心がある。久保が得点源へ近づくには、この構造の中で「作る側」から「最後に入る側」へ移る場面を増やす必要がある。
| 選手 | リーグ戦での主な数字 | 意味 |
|---|---|---|
| ミケル・オヤルサバル | 12得点 | 中央の基準点。PKやボックス内で仕上げる役割が大きい |
| ゴンサロ・ゲデス | 8得点 | 前線で縦方向の推進力と得点を担う |
| 久保建英 | 2得点、4アシスト | 仕掛けとラストパスで貢献。次の課題はシュート数と侵入回数 |
久保の伸びしろは、役割を変えることよりも、今の役割のままゴール前に入る頻度を増やすことにある。 右でボールを受けるだけでなく、逆サイドからのクロスに対してファーへ入る。味方のポストプレーに対してペナルティーアーク付近で待つ。そうした細かい位置取りが増えれば、得点数は変わる。
決勝で見えた起用法:先発固定ではなく、状態と時間帯で使われた
国王杯決勝で久保がベンチスタートだった事実は、軽く扱えない。日刊スポーツは、久保が長期離脱から復帰したばかりで、3試合連続のベンチスタートだったと伝えている。つまり、この決勝の起用は「序列が落ちた」と断定するより、コンディションと試合展開を見た投入と読む方が自然だ。
後半43分という投入時間は短い。だが、2-2の決勝で延長戦に入る局面は、技術だけでは足りない。守備で戻る、ボールを失わない、カウンターの出口になる。ソシエダードが久保に求めたのは、派手な単独突破だけではなく、試合を壊さずに前進する役割だった。
途中出場の意味
途中出場の久保には、先発時とは違う難しさがある。
- 相手の守備ブロックが疲れている一方で、試合全体の強度は高い
- 自分だけがテンポを上げすぎると、ボールロストが失点に直結する
- 延長戦では、攻撃参加と帰陣の判断がより重くなる
ここで久保が評価されるなら、ゴールやアシストだけではない。終盤に入ってもボールを前へ運べること、右サイドで相手の圧力を受けながら時間を作れることが、タイトルマッチでは価値になる。
日本代表での可能性:1トップではなく、得点を奪う2列目として
日本代表の文脈で見ると、久保を「ストライカー」と呼ぶより、得点を奪う2列目と捉えた方がチーム設計に合う。
中央には上田綺世、町野修斗、小川航基のように、ボックス内で勝負できるFWがいる。久保の強みは彼らと競合することではなく、その周囲で相手の守備をずらし、自分も最後に入っていくことだ。
たとえば日本代表で久保を生かすなら、考えられる形はこうなる。
- 右シャドーで受け、左足のシュートとスルーパスを両立する
- 右ウイングで幅を取り、SBとの連係からカットインする
- 1トップの周囲でセカンドボールを拾い、ミドルレンジから狙う
- 試合終盤に投入し、相手の疲れたサイドを運ぶ
特に重要なのは、中央FWとの関係だ。久保がボールを持った時、FWが裏へ走ればパスが生まれる。FWがDFを背負えば、久保のシュートコースが開く。久保を単独の主役として置くより、FWとセットで設計した方が得点に近づく。
Jリーグへの示唆:サイドの才能を「仕掛け役」で終わらせない
このテーマは海外組の話で終わらない。Jリーグでも、若いサイドアタッカーが「ドリブルは面白いが、数字が伸びない」と評価されることは多い。
久保の現在地から見える育成上の論点は明確だ。サイドで受ける技術だけでなく、最後にどこへ入るかを若い段階から鍛える必要がある。
Jクラブが参考にできるポイントは、次の通りだ。
- 右サイドの選手にも、逆サイドからのクロスに入るタスクを与える
- 「抜く」だけでなく「シュートで終える」練習を増やす
- ハーフスペースで受けた後、パスとシュートを同じ姿勢から選ばせる
- 守備で戻れる選手ほど、終盤の攻撃カードとして使いやすい
Jリーグでは、サイドアタッカーが若いうちに守備タスクを背負いすぎ、ゴール前へ入る習慣が薄くなるケースもある。一方で、守備を免除すると強度の高い試合で使いにくくなる。久保のように、守備を担いながら得点に近づく選手像は、日本のクラブにとっても現実的な育成目標になる。
周辺評価をどう読むか:称賛と課題は両立する
国王杯優勝後、現地ではマレーロがMVPとして大きく扱われた。RFEF公式も、PK戦で2本を止めたマレーロを決勝の最重要人物として伝えている。これは妥当だ。決勝を直接動かしたのはGKのセーブだった。
一方で、日刊スポーツは地元紙が久保を含む選手たちに高評価を与えたことも紹介している。チーム全体で勝ち切った決勝であり、途中出場の選手も含めて評価されたという文脈だ。
ここで大切なのは、久保を過剰に持ち上げないことだ。決勝の主役はマレーロ。攻撃の得点者はバレネチェアとオヤルサバル。久保はその中で、復帰途上の状態で終盤を任された選手だった。
ただし、それでも意味はある。タイトルが懸かった試合でプレーした経験は、代表やクラブで次に重い局面を迎えた時の判断材料になる。派手な数字がなくても、監督が終盤に使えると判断した事実は残る。
今後の注目点:久保はどこまでゴール前に近づけるか
久保の次の課題は、明快だ。アシスト役としての価値を保ったまま、得点数を増やせるか。国王杯のタイトルは到達点ではなく、その問いをさらに大きくした。
今後見るべきポイントは、次の4つになる。
- リーグ戦で先発に戻るまでのコンディション
- 右サイドから中央へ入る回数
- ボックス内、またはペナルティーアーク付近でのシュート場面
- 日本代表で中央FWとどう組み合わされるか
久保が9番になる必要はない。だが、右サイドの創造者で終わる必要もない。ソシエダードでタイトルを得た今、次に問われるのは、決勝の舞台に立った選手がシーズンを通してどれだけゴールに近い場所へ入り続けられるかだ。
