MENU

支配率66%でも勝ち切れず――東京V対川崎F、1-1を分けた「決定機の質」

味の素スタジアムで競り合う緑と青黒のサッカー選手たち。

支配率66%でも勝ち切れず――東京V対川崎F、1-1を分けた「決定機の質」

後半開始直後、東京ヴェルディが新加入の溝口修平のゴールで先制した。川崎フロンターレはボールを握り続け、終了間際の90+6分にラザル・ロマニッチが同点弾。2026/27明治安田J1リーグの開幕戦は1-1で終わった。

では、川崎Fは支配率66%、シュート15本を記録しながら、なぜ勝ち切れなかったのか。数字が示す核心は、ボールを持った長さよりも、相手守備を崩した後の一手で両者に大きな差がなかったことにある。

この記事で分かることは次の3点だ。

  • 1-1に至った得点経過と選手起用
  • 支配率とシュート数だけでは説明できない試合内容
  • 東京Vの守備と川崎Fの終盤の攻勢が、それぞれ残した成果と課題
目次

公式記録で振り返る開幕戦

東京Vが後半開始直後に先行し、川崎Fが最後の攻撃で勝点1を拾った試合だった。

  • 大会:2026/27明治安田J1リーグ 第1節
  • 開催日:2026年8月9日
  • キックオフ:18時04分
  • 会場:味の素スタジアム
  • 結果:東京ヴェルディ 1-1 川崎フロンターレ
  • 入場者数:27,452人
  • 天候:晴れ
  • 気温:30℃
  • 湿度:69%

前半は両チームとも無得点。試合が動いたのは後半開始から約1分後だった。

東京Vは福田湧矢のシュートをGKスベンド・ブローダーセンに防がれた後も攻撃を終わらせず、染野唯月からのパスを受けた溝口が左足でゴール右下へ決めた。鹿島アントラーズから期限付き移籍で加入した溝口は、東京Vでのリーグ初戦に先発し、最初の得点を記録した。

川崎Fは後半アディショナルタイム6分、途中出場の佐々木旭が左サイドからクロス。平川怜のクリアで生じたこぼれ球を、こちらも途中出場のロマニッチが左足で押し込んだ。

得点経過

  • 46分:溝口修平(東京V、アシスト:染野唯月)
  • 90+6分:ラザル・ロマニッチ(川崎F)

同じ1点でも、その成り立ちは異なる。東京Vは最初のシュートを止められても攻撃を継続し、川崎Fは試合終了寸前まで相手陣内へボールを運び続けた。両得点とも、守備側が一度対応した後の「次のボール」から生まれている。

先発と交代から見える両チームの狙い

東京Vは運動量を保つ交代、川崎Fはボール保持を得点へ変えるための交代を重ねた。

東京ヴェルディの先発

  • GK:マテウス
  • DF:林尚輝、宮原和也、鈴木海音
  • MF:平川怜、溝口修平、食野壮磨、内田陽介
  • FW:松橋優安、染野唯月、福田湧矢

東京Vでは背番号18の溝口が先発に入り、得点という形で起用に応えた。染野は中央で得点に絡み、福田の枠内シュートを起点とした一連の攻撃を、チームとして先制までつなげた。

川崎フロンターレの先発

  • GK:スベンド・ブローダーセン
  • DF:谷口栄斗、ペドロ・ホマーノ、三浦颯太、山原怜音
  • MF:山本悠樹、橘田健人、脇坂泰斗、伊藤達哉、紺野和也
  • FW:持山匡佑

川崎Fは中盤に山本、橘田、脇坂を置き、公式スタッツではパス成功率85%を記録した。ただし、先発した前線の選手による得点はなく、同点弾は交代出場の2人が関与した左サイドの攻撃から生まれた。

交代と警告

東京Vは次の5人を投入した。

  • 63分:井上竜太(鈴木海音に代わって出場)
  • 68分:仲山獅恩(松橋優安に代わって出場)
  • 73分:熊取谷一星(食野壮磨に代わって出場)
  • 80分:新井悠太(福田湧矢に代わって出場)
  • 86分:白井亮丞(溝口修平に代わって出場)

川崎Fも5人を起用した。

  • 61分:マルシーニョ(紺野和也に代わって出場)
  • 61分:ラザル・ロマニッチ(持山匡佑に代わって出場)
  • 75分:大関友翔(橘田健人に代わって出場)
  • 75分:佐々木旭(三浦颯太に代わって出場)
  • 86分:宮城天(山本悠樹に代わって出場)

警告は68分の伊藤達哉のみで、退場者はいなかった。

川崎Fの同点弾では、75分投入の佐々木が前進とクロスを担い、61分投入のロマニッチが仕留めた。交代策が得点へ直結したことは明確だ。一方、同点が90+6分まで遅れた点は、攻撃の修正に時間がかかったことも示している。

66%対34%――支配率ほど差が開かなかった理由

川崎Fは試合を長く支配したが、シュートの精度では東京Vを引き離せなかった。

主要スタッツ東京V川崎F
シュート14本15本
枠内シュート4本4本
ボール支配率34%66%
パス成功率73%85%
走行距離117.6km111.9km
スプリント116回108回
コーナーキック4本4本
オフサイド1回2回

川崎Fは支配率で32ポイント、パス成功率で12ポイント上回った。ところが、シュートは1本差、枠内シュートは4本ずつ。コーナーキックも4本ずつだった。

つまり、川崎Fはボールを保持して相手陣内へ進む回数を増やしたものの、最後のシュートを東京Vより明確に良い条件で打てていたとは、公開された集計値だけでは判断できない。支配率の差が、そのまま決定機の差にはならなかった。

枠内シュート率を単純計算すると、東京Vは約28.6%、川崎Fは約26.7%。ほぼ同水準である。東京Vは保持時間が短くても、攻撃をシュートまで運ぶ効率で大きく後れを取らなかったと考えられる。

ここがポイント: 川崎Fはボールを握る段階では優位だったが、枠内シュート数では優位を作れなかった。1-1という結果は、この差を端的に映している。

東京Vは「持たない時間」をどう得点へつないだか

東京Vの先制点は、守備で耐えた後の一発ではなく、最初のシュート後も人数を残した攻撃から生まれた。

公式速報によると、先制場面では福田が中央からシュートを放ち、ブローダーセンがセーブ。その後、染野のパスに溝口が反応した。シュート、セーブ、回収、ラストパス、フィニッシュと攻撃が続いている。

ここに東京Vの効率の良さが表れたと考えられる。ボール支配率34%でも14本のシュートを記録できたのは、奪った後に前進するだけでなく、一度防がれた攻撃を終わらせず、二次攻撃へ移れたためだ。

走行距離でも東京Vは川崎Fを5.7km上回り、スプリントは8回多かった。走行距離だけで守備の質や選手の貢献を断定することはできない。それでも、ボールを持たない時間に選手が移動し続け、保持率の差をシュート数の差へ直結させなかった背景を読む材料にはなる。

東京Vに残った課題は、先制後の試合の閉じ方だ。90分を過ぎても川崎Fに左サイドから運ばれ、クロスのこぼれ球を拾われた。守備側が最初のボールをクリアしても、ペナルティーエリア中央のロマニッチまで次の対応が届かなかった。

川崎Fを救ったのは、保持率ではなく交代選手の具体的な仕事

川崎Fが勝点1を持ち帰れた直接の理由は、佐々木の縦への前進とロマニッチのゴール前への入り方だった。

川崎Fは61分にマルシーニョとロマニッチを同時投入し、75分には佐々木と大関をピッチへ送った。得点場面では佐々木が左から自ら運んでクロスを上げ、相手のクリア後にロマニッチが中央で反応した。

この場面は、単にパスをつなぐだけでなく、佐々木がボールを前へ運んで守備者を後退させたことに意味がある。最後は整った形のラストパスではなかったが、クロスを入れてペナルティーエリア内に混乱を生み、こぼれ球を得点へ変えた。

一方で、66%の支配率と85%のパス成功率を記録しながら、同点まで90分以上を要した。川崎Fが今後勝点3を積み上げるには、ボール保持を次の形へ変える必要がある。

  • 相手守備を横に動かした後、誰が縦へ運ぶのか
  • クロスやシュート後のこぼれ球に、何人が入るのか
  • 先発の攻撃陣が、交代選手の投入前にどれだけ枠内シュートを増やせるか

公開スタッツだけでは、シュート位置や決定機の質までは分からない。したがって、保持率の高さを「攻撃が機能した証拠」と断定することも、逆に「意味のない保持」と切り捨てることもできない。ただ、枠内シュートが東京Vと同数だった事実は、改善点の場所を示している。

過去2試合との違いは、東京Vが得点を奪ったこと

東京Vは2026年の直近2度の対戦で無得点だったが、今回は新加入の溝口がその壁を破った。

両クラブは明治安田J1百年構想リーグのEAST地域リーグラウンドでも対戦している。

  • 2026年3月18日:東京V 0-2 川崎F
  • 2026年5月6日:川崎F 1-0 東京V
  • 2026年8月9日:東京V 1-1 川崎F

川崎Fは百年構想リーグの2試合を合計3-0で制した。今回もボール保持では優位に立ったが、東京Vは3試合目で初めて得点し、初めて勝点を得た。

違いを生んだ人物が溝口だったことは重要だ。公式プレビューでは、東京Vが鹿島から溝口を期限付き移籍で獲得し、手薄だった左ウイングバックで即戦力として期待されていることが紹介されていた。その選手が先発し、後半開始直後に先制点を奪った。補強の狙いが開幕戦から結果に表れた形だ。

もっとも、過去3試合のスコアだけで両チームの力関係が逆転したとは言えない。今回も川崎Fは15本のシュートを放ち、最後に追いついた。東京Vにとっては「川崎Fから得点し、負けなかった」前進と、「リードを最後まで守れなかった」課題が同時に残った試合である。

開幕戦の結論――差がつかなかったのは、最後の一手が互角だったから

川崎Fが勝ち切れなかった最大の要因は、保持率とパス成功率の優位を枠内シュート数の優位へ変えられなかったことだ。

東京Vは少ない保持時間から14本を打ち、川崎Fと同じ4本を枠へ飛ばした。さらに溝口が二次攻撃を仕留めた。川崎Fも交代選手の佐々木とロマニッチが終了間際に具体的な仕事を果たし、敗戦を回避した。

両チームは勝点1で2026/27シーズンを開始した。開幕直後のため、順位の数字から長期的な見通しを導く段階ではない。次に見るべきなのは、次の3点だ。

  • 東京Vは先制後も前線からの圧力と走力を維持できるか
  • 川崎Fは高い保持率を、より多くの枠内シュートへ変えられるか
  • 両チームの交代選手が、今後はより早い時間帯から得点に関与できるか

真夏の開幕戦で両者を分けなかったのは、支配率ではない。ゴール前の最後の一手が、4対4という枠内シュート数の通り互角だった。次節以降、川崎Fが「持つ」から「仕留める」へ進めるか、東京Vが「耐えて先行する」から「勝ち切る」へ進めるかが、最初の具体的な観察点になる。

参照リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次