清水新スタジアム実現へ一歩前進 2026年度内の結論に向け可能性調査

清水駅東口の新スタジアム構想が、実現に必要な条件を具体的に検証する段階へ進んでいる。
静岡市は「清水駅東口地区新スタジアム実現可能性調査業務」の公募型プロポーザルを実施し、契約候補者にボストン・コンサルティング・グループ合同会社を特定した。調査では、施設の需要や事業収支、官民の役割分担、民間事業者の参入可能性などを検討し、2026年度内に新スタジアムが実現可能かどうかの結論をまとめる方針だ。
新スタジアムの規模や事業方式、費用負担、開業時期はまだ決まっていない。それでも、構想を期待だけにとどめず、専門的な調査を通じて実現可能な計画へ進める具体的な工程が始まったことは、大きな前進といえる。
- 需要や年間来場者数、事業収支を複数の施設パターンで検証する
- 民設民営、負担付き寄附、PFIなどの事業方式を比較する
- 民間事業者への調査を通じて、投資や運営への参入可能性を確かめる
- 契約候補者はボストン・コンサルティング・グループ合同会社
- 業務期間は契約日から2027年3月19日まで
- 調査結果を踏まえ、2026年度内に実現可能性を判断する予定
ここがポイント:新スタジアムの実現に向け、調査を担う契約候補者が特定された。今後は需要、収支、官民の負担、民間参入の条件を具体化し、どのような形なら持続可能な整備・運営ができるのかを見極めることになる。
契約候補者はボストン・コンサルティング・グループ
静岡市は公募型プロポーザルの審査結果として、ボストン・コンサルティング・グループ合同会社を契約候補者に特定した。
市が2026年8月27日に公表した結果によると、プロポーザルには5事業者が参加した。ボストン・コンサルティング・グループ合同会社は339点を獲得し、参加事業者の中で最高得点となった。次点の事業者は318点だった。
ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、1963年に米国で創設されたグローバルな経営コンサルティングファームだ。同社の公式情報では、50を超える国と地域の100を超える都市に拠点を構え、企業や公共部門などを対象に、経営戦略の策定から組織変革、事業の実行までを支援している。
対応分野にはパブリックセクターや都市計画、運輸・物流、旅行・観光、テクノロジー・メディア・通信などが含まれる。需要分析や事業戦略、収益モデル、組織設計、リスク管理といった複数の観点を組み合わせて支援する点が特徴だ。
同社が公式サイトで紹介している支援実績は幅広い。顧客インサイトの領域では、50か国を超える地域で4,000件以上のプロジェクトを手掛けたとしている。また、メディア・エンターテインメント分野では、スポーツコンテンツを扱う大手放送事業者に対し、広告営業や視聴者向けサービスの戦略を支援し、広告収入の前年比50%増につながった事例を公表している。
ただし、これらはBCG全体の専門性や支援事例であり、清水駅東口の新スタジアムについて具体的な施設案や事業方式が決まったことを意味するものではない。今回の業務では、静岡市の仕様書に沿って、地域の需要や事業収支、民間企業の参入意向などを個別に検証することになる。
実現に向けた可能性調査が具体化
今回の調査は、新スタジアム構想を実行可能な事業計画へ近づけるための工程だ。
静岡市は2026年7月9日、「清水駅東口地区新スタジアム実現可能性調査業務」の公募を開始した。対象地はJR清水駅東口の地域づくりエリアで、業務期間は契約日から2027年3月19日まで。公募型プロポーザル実施要領に記された契約上限額は、消費税と地方消費税を含む2,000万円である。
市の公式資料では、清水駅東口のまちづくりにおける中核施設として、多目的スタジアムが最有力候補に位置付けられている。今回の調査では、新スタジアムの事業成立性や収益性向上策を検討する。
検討するのは、単にスタジアムを造れるかどうかではない。誰が資金とリスクを負担し、試合のない日にも収益を生み出し、駅周辺のまちづくりと両立させるのか。長期にわたって運営できる仕組みを具体化することが求められる。
公式仕様書が示す調査内容
最大の焦点は、需要、収入、費用、リスクを持続可能な事業モデルとして組み立てられるかどうかだ。
市の仕様書によると、調査では収容人数と付帯施設の種類・規模について複数のパターンを設定する。付帯施設の例には、VIPルーム、飲食店、物販店、ホテル、子育て施設などが挙げられている。
年間を通じた需要を調べる
仕様書が求める需要調査は、主に次の項目で構成される。
- 競合施設の状況
- 狙う客層と商圏人口
- 興行やイベントを含む年間来場者数
サッカー開催日の観客数だけでなく、その他のイベントや付帯施設の利用も含めて年間の需要を見通す内容だ。
施設を持続的に運営するには、試合のない日にも人が訪れる理由と、その来訪を飲食、物販、イベントなどの収入につなげる仕組みが必要になる。新スタジアムが日常的に利用される場所になれるかどうかも、事業性を左右する重要な要素だ。
複数の事業方式を比較する
事業手法の検討では、事業収支シミュレーションに加え、民間事業者の参入可能性、リスク分析、VFMの整理が求められている。VFMは、支払う費用に対してどれだけの価値を得られるかを比較する考え方だ。
仕様書は比較対象として、次の方式を例示している。
- 民設民営
- 負担付き寄附
- PFI(コンセッション方式)
方式が変われば、建設費を負担する主体、施設を所有する主体、運営収入を得る主体も変わる。来場者数が想定を下回った場合や、整備費・維持費が増えた場合のリスクを誰が引き受けるのかも異なる。
静岡市は、どのPPP方式を採用するかは決定しておらず、民設を前提にしているわけでもないと説明している。調査を通じて、行政と民間の役割や負担を具体的に比較することになる。
民間事業者への調査が実現性を左右する
収支計画を作るだけでなく、実際に投資や運営を担う事業者が参入できる条件を探ることが重要になる。
市の仕様書は、公募型Webアンケートによる事前スクリーニングと、20社程度を対象にしたヒアリング調査の支援を業務に含めている。対象は、新スタジアムの整備・運営に意欲を持つ企業や、事業の関係者になり得る主体だ。
調査では、少なくとも次のような点が焦点になる。
- 民間企業が投資や運営に参加できる収益水準か
- どのリスクまで民間側が引き受けられるか
- 行政による費用負担がどの程度必要になるか
- 飲食、物販、ホテルなどの運営主体を確保できるか
- 興行日と非興行日の双方で収益事業が成立するか
民間事業者が参加しやすい条件と、市民負担を抑える条件が一致するとは限らない。双方が納得できる役割分担を見つけられるかどうかが、実現に向けた大きな鍵になる。
清水駅前の立地をまちづくりに生かせるか
JR清水駅前という利便性と、富士山や駿河湾を望む環境は、新スタジアムの大きな可能性になる。
市の仕様書は、対象となる地域づくりエリアの特徴として、JR静岡駅から電車で約10分、JR清水駅前という交通利便性、約14ヘクタールの敷地、富士山・駿河湾・三保半島を望む環境などを挙げている。
駅前立地は、鉄道を利用する観客の来場を促し、スタジアムと周辺地域の回遊を生み出す可能性がある。一方で、試合終了後に駅や歩行者動線へ利用者が集中する場面を想定し、安全で円滑に移動できる環境を整える必要もある。
スタジアムの収支と地域への効果を分けて考える
市は、新スタジアムの周辺環境も含めて、興行日と非興行日の収益性向上策を提案するよう求めている。一方、仕様書では、周辺施設整備を含めた一体的な収支は調査対象にしないと明記している。
スタジアム周辺に飲食店や宿泊施設が生まれ、清水駅西口、日の出地区、三保などへの回遊が増えれば、清水全体への経済効果が期待できる。ただし、周辺地域で生まれる売上や便益を、そのままスタジアム運営事業の収入として扱うことはできない。
今後は、少なくとも次の二つを分けて評価する必要がある。
- スタジアムの整備・運営事業を継続できるか
- 駅周辺や清水区全体に、費用に見合う社会的・経済的効果があるか
施設単体の事業性と、地域全体にもたらす価値の両方を確かめることが、駅前に新スタジアムを整備する意義の明確化につながる。
約14ヘクタールの土地を生かすための条件
静岡市は2026年2月定例会の答弁で、地域づくりエリアを含む約14ヘクタールには道路や上下水道などのインフラが整備されておらず、土地区画整理が必要だと説明している。
現在の工業専用地域と工業港区のままでは、商業施設やスポーツ施設などを整備できないため、静岡県との調整を経て都市計画と港湾計画を変更する必要もある。
また、対象区域の一部は津波災害警戒区域内にある。市は、防災機能を強化する取り組みとして、レベル2津波への対応を想定した地盤のかさ上げなどを挙げている。
新スタジアムの実現には、建物の事業性に加えて、次の条件を具体化する必要がある。
- 道路、上下水道、歩行者動線などの基盤整備
- 都市計画と港湾計画の変更
- 津波に備える防災対策
- 地権者間の合意形成
- 周辺施設や既存市街地との連携
これらの費用、実施主体、工程が整理されることで、スタジアムの規模や開業までの道筋も見えやすくなる。
次の注目点は実現のための具体的な条件
新スタジアムへの期待を具体的な計画につなげられるかどうかは、これから示される調査結果にかかっている。
市の仕様書では、2026年11月上旬をめどに中間報告書を作成し、最終的な業務期間を2027年3月19日までとしている。市は2026年2月定例会の答弁で、2026年度内に新スタジアムが実現可能かどうかの結論を出す考えを示した。
現段階では、収容人数、総整備費、官民の負担割合、運営主体、開業時期は確定していない。今後の公表資料では、次の点に注目したい。
- 年間来場者数を、サッカーとその他のイベントに分けてどう見積もるか
- 整備費と運営費を誰が負担し、市の財政支出をどこまで想定するか
- 民間事業者が参入するために必要な条件は何か
- 試合のない日に、どの施設や事業で収入を得るか
- 駅、道路、防災、周辺整備の費用をどう整理するか
- 地域への経済効果を、スタジアム事業の収益と分けてどう評価するか
清水駅東口の新スタジアム構想は、調査を担う契約候補者が決まり、実現に必要な条件を数字と事業者の意向から確かめる段階へ進んだ。調査によって持続可能な事業方式と官民の役割分担が示されれば、新スタジアム実現への道筋はさらに具体的になる。
