札幌の反撃はなぜ続かなかったのか――栃木シティが突き放した6分間と枠内シュート
後半7分、途中出場の白井陽斗が決め、札幌は1点差に迫った。しかし、その4分後に小池裕太、さらに2分後に西谷和希が得点。栃木シティが再び差を広げ、4―1で勝利した。
札幌はシュート21本、栃木シティは10本。なぜ2倍以上のシュートを打った札幌が3点差で敗れたのか。記録から浮かぶのは、枠内へ届いたシュートの割合の差と、札幌の反撃直後に栃木シティが重ねた2得点だ。
- 札幌は支配率60%、シュート21本に対し、枠内は4本。
- 栃木シティはシュート10本のうち6本が枠内。小池と西谷が2得点ずつを挙げた。
- 札幌が1―2とした後半7分から、後半13分までにスコアは1―4へ動いた。
試合結果と得点経過――札幌の追い上げを栃木シティが短時間で突き放した
得点経過の分岐点は、札幌が1点差に迫った直後にあった。
2026年9月6日、札幌厚別公園競技場で行われた2026/27明治安田J2リーグ 第5節は、北海道コンサドーレ札幌が栃木シティに1―4で敗れた。前半は0―2、後半は1―2だった。Jリーグ公式の試合記録
得点時間は以下の通り。スコアは札幌側を左に記す。
- 前半28分:小池裕太(栃木シティ)/0―1
- 前半38分:西谷和希(栃木シティ)/0―2
- 後半7分:白井陽斗(札幌)/1―2
- 後半11分:小池裕太(栃木シティ)/1―3
- 後半13分:西谷和希(栃木シティ)/1―4
札幌はハーフタイムにティラパットとスパチョークを下げ、白井陽斗と長谷川竜也を投入した。その白井が後半7分に得点している。
この交代には、少なくとも得点という成果があったと評価できる。ただし、追い上げを続ける時間は短かった。1点差に戻してから6分で3点差となった経過を踏まえると、札幌の攻撃面の改善と、失点を抑える課題は分けて考える必要がある。
シュート21対10でも、枠内では4対6に逆転した
札幌の攻撃回数の多さは、枠内シュートの多さにはつながらなかった。
| 指標 | 北海道コンサドーレ札幌 / 栃木シティ |
|---|---|
| 得点 | 1 / 4 |
| シュート数 | 21 / 10 |
| 枠内シュート数 | 4 / 6 |
| ボール支配率 | 60% / 40% |
| パス成功率 | 81% / 70% |
| コーナーキック | 10 / 0 |
数値はJリーグ公式の試合記録の終了時サマリーによる。公式速報の定型文には札幌のシュート20本・枠内3本という異なる表示が残るが、本稿の比較と比率計算は終了時サマリーの21本・4本に統一した(2026年9月8日確認)。
差が出たのは、打つまでだけでなく枠へ届ける段階
公式記録から計算すると、シュートに占める枠内シュートの割合は札幌が約19.0%、栃木シティが60%。得点をシュート数で割った割合は、それぞれ約4.8%と40%になる。
札幌はシュート数で2.1倍、栃木シティは枠内シュート数で1.5倍。 この逆転が、結果を読み解く出発点になる。
ただし、この数字だけで札幌の敗因を「決定力不足」と片付けるのは難しい。枠内に届かなかったシュートには、狙いが外れたものだけでなく、相手にブロックされたものも含まれ得る。打った位置、相手の寄せ、シュート前の体勢によって難しさは変わる。
札幌について検討したいのは、最後のキックの精度と、その前に打ちやすい状況をつくれていたかの両方だ。一方、栃木シティの6本の枠内シュートと4得点は、この試合で攻撃を得点へ結び付けた効率の高さを示す材料になる。ただし、今後も同じ割合で決まるとまでは予測できない。
支配率とCKは、決定機の数そのものではない
札幌は支配率、パス成功率、CK数でも栃木シティを上回った。とりわけCKは10対0だった。
それでも、ボールを持つ時間やCKの本数だけでは、ゴールにどれだけ迫れたかを測り切れない。パス成功率には自陣での横パスも含まれ、CKも獲得後に誰がどの位置で触れたかによって価値が変わる。
また、栃木シティは前半28分からリードしていた。追う札幌とリードを持つ栃木シティでは、必要な攻撃の仕方が変わった可能性がある。試合全体の支配率を、そのまま90分間の主導権と読み替えることは避けたい。
この試合の札幌は「打てなかった」のではなく、21本を打ちながら枠内4本にとどまった。改善点を探すなら、さらに本数を増やすことより、どの位置から、どれだけ余裕を持って打てたかに焦点を当てる方が有効と考えられる。
反撃後の6分――交代の成果を上回った栃木シティの追加点
札幌の交代が得点につながった後、栃木シティは交代選手を投入する前に2点を加えた。
札幌が白井と長谷川を投入したのは後半開始時。白井の得点は後半7分で、小池の追加点は同11分、西谷の追加点は同13分だった。栃木シティの最初の交代は同22分で、トクマック グェンに代わって鈴木武蔵が入っている。
56分の得点は、トクマック グェンのスルーパスを受けた小池裕太がペナルティエリア左から左足でゴール左上へ決めたもの。58分には西谷和希がペナルティエリア中央から右足でゴール右下へ決めた。札幌の追い上げ後も、栃木シティがゴールに向かうプレーを完結させた具体例である。Jリーグ公式速報
この順序から、栃木シティが1―2から1―4へ突き放した局面を、途中出場選手の効果として説明することはできない。先に出場していた選手たちが、札幌の反撃に得点で応じた形だ。
小池と西谷は前半にも1点ずつを挙げ、後半にも同じ順番で得点した。4得点はこの2人に集中している。
この集中は、当日の仕上げ役が明確だったことを示す。一方で、チーム全体が特定の2人に依存しているかどうかは、この1試合だけでは判断できない。札幌側から見ても、同じ2人に再び決められた事実と、同じ守備のミスを繰り返したという評価は別だ。後者には各得点場面の配置や対応の確認が必要になる。
その後の交代は、すでに3点差となってから
残る交代は次の通りだった。いずれもスコアが1―4となった後の変更である。
- 札幌・後半15分:宮澤裕樹から荒野拓馬、唐山翔自からアマドゥ バカヨコ。
- 札幌・後半27分:真田蓮司からマリオ セルジオ。
- 栃木シティ・後半27分:吉田篤志から山下敬大、西谷和希から升掛友護。
- 栃木シティ・後半40分:森俊貴から加藤丈、小池裕太から加藤大。
札幌は追加の交代後に得点を挙げられなかった。ただし、それだけで投入選手の働きを否定することはできない。交代時点の点差と残り時間を踏まえ、得点以外にどれだけ攻撃を改善できたかを見たい。
栃木シティについても、交代の狙いを記録だけから断定することはできない。確実なのは、4得点を挙げた2人が交代する前に、最終スコアが形づくられていたことだ。
先発と警告の記録――人数や配置の評価には時間軸が欠かせない
起用を評価する際は、開始時のメンバーと途中の出来事を分けて捉える必要がある。
Jリーグ公式の先発発表に掲載された両チームの11人は以下の通り。登録上のポジションだけで実際の布陣を決め付けないため、ここでは選手名を示す。
- 札幌:田川知樹、パク ミンギュ、内田瑞己、野瀬翔也、梅津龍之介、宮澤裕樹、真田蓮司、スパチョーク、ティラパット、唐山翔自、ヴィニ ペイショット。
- 栃木シティ:キム ジンヒョン、マテイ ヨニッチ、照山颯人、佐藤喜生、シモンズ エイデン、森俊貴、ペドロ アウグスト、西谷和希、吉田篤志、小池裕太、トクマック グェン。
警告・退場は次の通り。
- 19分:北海道コンサドーレ札幌のスパチョークに警告。
- 34分:栃木シティの照山颯人に警告。
- 61分:栃木シティの西谷和希に警告。
- 80分:栃木シティの照山颯人に2枚目の警告。照山颯人は退場となった。
退場時点ではすでに1―4だった。したがって、栃木シティが数的不利になる前に3点差をつけていたことになる。退場は終盤の試合条件を変える出来事だが、それ以前の4得点や札幌の失点を説明する要因にはならない。
両チームに残る論点――札幌は枠内へ、栃木シティは得点効率の再現へ
この試合を分けたのは、攻撃の総量に対して栃木シティがより多くの枠内シュートと得点を生み、札幌の追い上げ直後にも得点を重ねたことだと考えられる。
札幌にとって、白井の途中出場から得点が生まれたことは前向きな材料になる。ただし、1点差に迫ってから6分間で2失点したため、その成果が追い上げの継続につながらなかった。シュート21本をどう改善するかと、得点後にどう失点を防ぐかを、同時に見直す必要がありそうだ。
栃木シティは10本で4得点という結果を残した。次に注目したいのは、その高い得点効率を支えた攻撃の形を再びつくれるか。得点者の好調だけに説明を寄せず、シュートに至るまでに周囲がどのように関わったかまで追いたい。
公式速報には期待得点(xG)も掲載され、札幌1.34、栃木シティ0.80となっている。xGはシュートが得点になる可能性の推定値で、実際の得点とは異なる。ただし、この値を載せた速報文と終了時サマリーでは札幌のシュート集計に差があり、同じ更新時点の数値とは確認できないため、参考値として扱う。シュート1本当たりへの換算など、両表示を混ぜた計算は行わない。時間帯別保持率も速報にあるが、それだけで監督の指示や配置変更の効果は断定できない。Jリーグ公式速報
次に両チームを見る際の焦点は、次の3点に絞れる。
- 札幌のシュート:本数に加え、枠内へ届く割合が改善するか。
- 札幌の得点後:追い上げた直後に相手の追加点を防げるか。
- 栃木シティの攻撃:小池と西谷へ、再び得点につながるボールを届けられるか。
21対10というシュート数の先にある、4対6という枠内シュート数。そして、1―2から1―4へ動いた6分間。札幌の改善と栃木シティの再現性を追ううえで、この2つが具体的な比較基準になる。










