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槙野新監督、藤枝MYFC躍進の秘訣

槙野新監督、藤枝MYFC躍進の秘訣

2026年3月20日時点で見ると、藤枝MYFCの序盤戦は「派手な快走」ではないが、「監督交代の狙いが見え始めた好スタート」と言っていい。明治安田J2・J3百年構想リーグの地域リーグラウンドEAST-Bで、藤枝は第5節終了時点で2勝1PK勝1PK負1敗、勝点9。開幕戦はFC岐阜に0-2で敗れたものの、その後は松本山雅FC、いわきFCに90分勝ち。ヴァンフォーレ甲府、ジュビロ磐田には引き分けからPK戦にもつれ込み、甲府戦は敗れたが、磐田戦はPK戦を制した。

結論を先に言えば、藤枝躍進の鍵は3つある。1つ目は、槙野智章監督が従来の藤枝らしい保持志向を残しながら、守備強度と切り替えの基準を上げようとしていること。2つ目は、菊井悠介や真鍋隼虎ら新戦力が、ゴール前の質を早い段階で補っていること。3つ目は、徳田航介代表を中心にクラブが「攻撃的な理念を捨てずに、勝てる集団へ進化する」という方向で一貫していることだ。

目次

まずは事実整理。藤枝MYFCの現在地

藤枝は2009年創立のクラブで、2022シーズンに悲願のJ2昇格を達成した。2026年シーズンは、秋春制移行に伴う特別大会である明治安田J2・J3百年構想リーグを戦っている。クラブ公式の新監督就任会見で、徳田航介代表は「激しい攻撃と組織的な守備」というクラブのフィロソフィーをさらに前に進める役割を槙野監督に託したと説明している。

第5節までの藤枝の結果は以下の通り。

日付対戦相手結果得点者
第1節2026年2月8日FC岐阜0-2敗戦なし
第2節2026年2月14日松本山雅FC2-0勝利菊井悠介2
第3節2026年2月21日ヴァンフォーレ甲府1-1、PK3-4敗戦中村優斗
第4節2026年3月1日いわきFC2-1勝利菊井悠介、真鍋隼虎
第5節2026年3月7日ジュビロ磐田1-1、PK6-5勝利三木仁太

Jリーグ公式の第5節前順位表では、藤枝は4試合で勝点7、EAST-Bの5位。第5節で磐田にPK勝ちしたことで、上位争いに踏みとどまった。少なくとも「開幕黒星で失速」という流れにはなっていない。

チームスタッツでも輪郭は出ている。Jリーグ公式の2026シーズンチームスタッツでは、藤枝のシュート総数は52本、シュート決定率は11.5%。爆発的な得点力ではない一方、決め切りの効率は極端に悪くない。保持系の傾向も残っており、平均ボール支配率は59.9%、1試合平均パス数は547.0本だった。いずれも掲載時点の更新日が異なるため単純比較には注意が必要だが、「藤枝らしい保持」を土台に戦っている点は読み取れる。

槙野智章監督は何者か

槙野智章監督は1987年5月11日生まれ、広島県出身。選手としてはサンフレッチェ広島ユースからトップ昇格し、FCケルン、浦和レッズ、ヴィッセル神戸でプレーした。日本代表歴もあり、知名度ではJリーグ屈指の新任監督だ。

ただし、藤枝就任の本質は「有名人を呼んだ」ことではない。藤枝公式プロフィールによると、指導歴は2023年に品川CCセカンド監督、2024年から2025年に品川CCトップチーム監督。つまり、藤枝は完全な未経験者ではなく、アマチュア年代で監督経験を積んだ上でJクラブ初采配の人材を引き上げた形になる。

就任会見で槙野監督が掲げたキーワードは「UBAU」。本人はこれを「ボールを奪う、ゴールを奪う、勝ち点を奪う、ファンのハートを奪う」と説明した。さらに「Mirageo」という造語で、相手に読まれにくい新時代の攻撃的フットボールを語っている。言葉はかなり強いが、根本は明快だ。保持そのものが目的ではなく、ゴールと勝点につながる攻撃性を再定義しようとしている。

藤枝の戦い方はどう変わったのか

最も分かりやすい変化は、クラブ側が公式に「攻撃に繋げるための守備」「インテンシティ」「攻守の切り替えの徹底」を修正テーマとして明示している点だ。これは従来の藤枝が積み上げてきたボール保持や崩しの思想を否定するものではなく、そこに強度と再現性を上乗せする方向と言える。

開幕前、槙野監督は「変化」という言葉も口にしていた。ただし同時に「藤枝MYFCのフィロソフィーや理念を大事にしながら進みたい」とも述べている。ここが重要で、完全なモデルチェンジではない。

実際、序盤5試合を見ると藤枝は大勝型ではなく、接戦を拾うチームに変わりつつある。

  • 松本戦は16本のシュートを打って2-0勝利。
  • いわき戦はシュート数で7対12と下回りながら2-1で勝利。
  • 磐田戦は8対19と押し込まれたが、1-1で耐えてPK戦を制した。

この3試合は性格が違う。それでも勝点を積めているのは、試合ごとに勝ち筋を変えられているからだ。これは「理想の形だけを追う」段階から一歩進んだサインでもある。

躍進の鍵1。新戦力が即戦力になっている

序盤の得点を見ると、菊井悠介がすでに2試合3得点。第2節の松本山雅FC戦では古巣相手に2得点を決め、いわきFC戦でも先制点を挙げた。2025年のJ3で松本山雅FCで28試合7得点だった実績を持つ選手が、そのまま即戦力化しているのは大きい。

真鍋隼虎も第4節いわき戦で決勝点。2025年7月に明治大学からの2026年加入内定が発表されていた大卒ルーキーだが、早い段階で結果を出した。さらに第5節磐田戦では三木仁太が初得点。得点源が1人に偏っていないのは好材料だ。

逆に言えば、ここから上位を本格的に狙うには、複数の攻撃ユニットをもう一段厚くしたい。シュート総数52本に対して得点は5。決定率11.5%は悪くないが、支配率やボール保持の時間を考えると、試合を早めに決める破壊力はまだ伸びしろがある。

躍進の鍵2。徳田航介代表のクラブ運営がぶれていない

今回の槙野招聘を語るうえで、徳田航介代表の判断は外せない。就任会見で徳田代表は、槙野監督に求めた条件として「攻撃的であること」「攻撃に繋げるための守備を徹底すること」「明確な言語化とリーダーシップ」を挙げた。単なる知名度先行ではなく、クラブの課題に対して人物像をかなり具体的に当てにいっている。

しかも藤枝は、クラブ規模が急拡大したビッグクラブではない。徳田代表は2026年元日の挨拶で、J2リーグ4シーズン目となった2025年に「1試合平均5,000人」の観客動員目標を達成したと報告している。2025年2月にはBiVi藤枝にオフィシャルファンショップも開設された。競技成績だけでなく、街との接点、集客、物販といった土台づくりが進んでいる。

槙野監督自身も就任会見で「地域共栄」「スタジアム」「メディア戦略」を打ち出しており、クラブ側の方向性と噛み合っている。藤枝の躍進は監督の戦術だけではなく、「地域に開かれた攻撃的クラブ」という設計図がフロントと現場で共有されている点にある。

各立場の見方を整理する

クラブ・現場の見方

クラブ幹部の発言を読むと、狙いはかなりはっきりしている。須藤大輔前監督が築いた土台を継承しつつ、勝ち切る集団へ変えること。そのために槙野監督の熱量、統率力、言語化能力に期待している。槙野監督自身も、開幕前から「今年、藤枝がすごいというところを見せられるチャンス」と前向きに語っていた。

地元メディアの見方

テレビ静岡や日刊スポーツの報道では、槙野監督の就任は「変化」と「熱量」の象徴として扱われている。特に地元では、話題性だけでなく、チームの空気を変えるリーダーとしての期待が大きい。開幕始動日に約1000人のサポーターが集まったという報道も、その関心の高さを示している。

サポーター目線で見えること

確認できる一次情報・報道ベースで言えば、サポーターの期待値は明らかに高い。新体制発表会には約900人、公開練習には約1000人、ファンショップ開業時にも多くの来場者が集まった。もちろん動員の多さだけで全評価はできないが、少なくとも「槙野体制を見てみたい」という熱はクラブの追い風になっている。

一方で、序盤の内容には課題も残る。岐阜戦ではホームで無得点敗戦、磐田戦もシュート数では押し込まれた。したがって、現時点のサポーター評価を一色で語るのは危険だろう。期待は大きいが、同時に「攻撃的で勝てるチーム」をどこまで実戦で示せるかが今後の評価軸になる。

今後の注目点

藤枝の次の焦点は、序盤の「勝点は取れるが圧倒まではしていない」状態を、どこまで上積みできるかだ。

  • 1つは、保持率の高さを90分勝ちの数に変えられるか。
  • 1つは、菊井悠介以外の継続的な得点源を増やせるか。
  • 1つは、強度を上げた守備が後半戦まで維持できるか。

槙野監督の藤枝は、まだ完成形ではない。ただ、クラブが求めた「攻撃的で、守備も整理され、言葉でチームを動かせる監督像」にはすでに沿っている。藤枝MYFC躍進の秘訣は、魔法のような戦術変更ではなく、クラブの理念を壊さずに勝負仕様へ寄せていることにある。

百年構想リーグは特別大会だが、ここで得た強度と勝負勘は、その先の2026/27シーズンにも直結する。槙野智章新監督と藤枝MYFCの挑戦は、まだ序章だが、追う価値は十分にある。

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