国立ホームは勝てないのか J1・J2リーグ戦26試合で見えた本当の傾向
国立競技場でのホーム開催は、少なくとも勝敗だけを見れば「勝ちにくい」とは言い切れません。2022年以降に新国立競技場で行われたJ1・J2リーグ戦を対象にすると、ホーム側は26試合で12勝5分9敗。ホーム勝率は46.2%でした。
同じ2020年以降のJ1リーグ全体では、ホーム勝率は40.9%、引き分け率は26.1%。国立開催はホーム勝率がやや高く、引き分けは少ない。つまり、「国立だからホームが不利になる」という数字ではない、というのが今回の結論です。
- 対象:新国立競技場でのJ1・J2リーグ戦のみ
- 除外:ルヴァンカップ、天皇杯、スーパーカップ、親善試合、代表戦、J1昇格プレーオフ
- 集計期間:2022年から2025年までのリーグ戦
- 比較対象:2020年から2025年までのJ1リーグ全体のホーム勝率・引き分け率
ここがポイント: 国立開催は「ホーム感が薄い」印象を持たれやすい一方、実際の勝率はJ1全体平均を下回っていません。ただし、クラブごとの本拠地開催とは条件が違うため、数字の読み方には注意が必要です。
対象試合一覧 国立でのJ1・J2リーグ戦は26試合
まず、今回の母集団をはっきりさせます。
新国立競技場でのJリーグ開催には、カップ戦やプレーオフも含めると話が広がります。ここではテーマを絞るため、通常のJ1・J2リーグ戦だけを数えました。
- 2022年7月2日 J1 清水 3-5 横浜FM:ホーム負け、56,131人
- 2022年9月18日 J1 FC東京 2-0 京都:ホーム勝ち、50,994人
- 2023年5月12日 J1 FC東京 2-1 川崎F:ホーム勝ち、56,705人
- 2023年5月14日 J1 鹿島 2-0 名古屋:ホーム勝ち、56,020人
- 2023年7月9日 J2 町田 2-2 東京V:引き分け、38,402人
- 2023年7月16日 J2 清水 2-2 千葉:引き分け、47,628人
- 2023年8月5日 J1 名古屋 1-0 新潟:ホーム勝ち、57,058人
- 2023年8月26日 J1 FC東京 2-2 神戸:引き分け
- 2023年9月24日 J1 湘南 0-2 川崎F:ホーム負け、54,243人
- 2023年10月21日 J1 神戸 3-1 鹿島:ホーム勝ち、53,444人
- 2024年2月25日 J1 東京V 1-2 横浜FM:ホーム負け、53,026人
- 2024年4月7日 J1 FC東京 2-0 鹿島:ホーム勝ち、52,772人
- 2024年6月1日 J1 鹿島 3-2 横浜FM:ホーム勝ち、52,860人
- 2024年6月16日 J1 神戸 1-0 川崎F:ホーム勝ち、49,541人
- 2024年7月20日 J1 町田 1-2 横浜FM:ホーム負け、46,401人
- 2024年8月24日 J1 横浜FM 4-0 C大阪:ホーム勝ち
- 2024年8月31日 J1 町田 2-2 浦和:引き分け、48,887人
- 2024年9月14日 J1 FC東京 4-1 名古屋:ホーム勝ち、55,896人
- 2024年9月28日 J2 清水 1-1 横浜FC:引き分け、55,598人
- 2025年2月16日 J1 東京V 0-1 清水:ホーム負け、52,541人
- 2025年4月6日 J1 神戸 0-1 新潟:ホーム負け、36,407人
- 2025年4月13日 J1 町田 0-2 浦和:ホーム負け、44,363人
- 2025年4月25日 J1 FC東京 3-0 G大阪:ホーム勝ち、44,519人
- 2025年5月3日 J1 清水 0-3 名古屋:ホーム負け、52,847人
- 2025年5月11日 J1 鹿島 2-1 川崎F:ホーム勝ち、59,574人
- 2025年9月28日 J1 FC東京 2-3 横浜FM:ホーム負け
集計すると、全体では次の通りです。
| 対象 | 試合数 | ホーム勝ち | 引き分け | ホーム負け | ホーム勝率 | 引き分け率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 国立開催 J1・J2リーグ戦 | 26 | 12 | 5 | 9 | 46.2% | 19.2% |
| うちJ1のみ | 23 | 12 | 2 | 9 | 52.2% | 8.7% |
J2の国立開催は3試合すべて引き分けでした。清水対千葉、町田対東京V、清水対横浜FCはいずれも集客面で強い意味を持つカードでしたが、勝敗ではホーム側が勝ち切れていません。
一方、J1だけに限るとホーム勝率は52.2%まで上がります。FC東京、鹿島、神戸、名古屋、横浜FMなどが国立で勝っており、数字だけなら「ホーム国立は不利」とは逆の傾向です。
J1全体と比べると、国立は勝率高め・引き分け少なめ
比較対象として、2020年から2025年までのJ1リーグ全体のホーム成績を見ます。
World Soccer Dataが公開している各年のフルタイム結果統計を合算すると、2020年から2025年までのJ1は2,058試合。ホーム勝ちは843試合、引き分けは538試合でした。年別に見ると、ホーム勝率はおおむね4割前後で推移しています。
| 対象 | 試合数 | ホーム勝ち | 引き分け | ホーム負け | ホーム勝率 | 引き分け率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全体(2020-2025) | 2,058 | 843 | 538 | 677 | 41% | 26% |
| 2020 | 306 | 118 | 68 | 120 | 39% | 22% |
| 2021 | 380 | 160 | 94 | 126 | 42% | 25% |
| 2022 | 306 | 122 | 97 | 87 | 40% | 32% |
| 2023 | 306 | 129 | 78 | 99 | 42% | 25% |
| 2024 | 380 | 146 | 104 | 130 | 38% | 27% |
| 2025 | 380 | 168 | 97 | 115 | 44% | 26% |
このJ1全体の数字と、国立開催の成績を並べると次のようになります。
| 対象 | 試合数 | ホーム勝ち | 引き分け | ホーム勝率 | 引き分け率 |
|---|---|---|---|---|---|
| J1全体 2020-2025 | 2,058 | 843 | 538 | 40.9% | 26.1% |
| 国立開催 J1・J2 | 26 | 12 | 5 | 46.2% | 19.2% |
| 国立開催 J1のみ | 23 | 12 | 2 | 52.2% | 8.7% |
この比較で一番目立つのは、国立開催の引き分け率の低さです。J1全体では4試合に1試合強が引き分けですが、国立開催のJ1だけなら23試合中2試合しか引き分けていません。
理由は一つに決めつけられません。ただ、国立開催は通常のホームゲームよりイベント性が強く、クラブも集客施策を厚く打つ傾向があります。試合の入り、選手起用、終盤のリスクの取り方に「勝って締めたい」空気が出やすい面はあります。
もちろん、これは戦術データだけで証明できる話ではありません。けれども数字上は、国立開催が膠着したドローに寄るよりも、勝敗がつく試合になりやすいことを示しています。
「ホーム感が薄い」は本当か 勝敗と雰囲気は分けて見る
国立開催でよく出る論点は、ホームクラブの本拠地ではないことです。
専用スタジアムや普段のホームでは、選手はピッチの芝、ロッカールーム、移動距離、サポーターの声の返り方まで慣れています。国立ではその慣れが薄くなります。地方クラブが東京開催にする場合は、ホームタウンの空気も変わります。
ただし、勝敗データではその不利は明確に出ていません。
ホーム勝ちが多いカードには共通点がある
国立で勝ったホーム側を見ると、単に「国立の雰囲気に乗った」というより、試合の中で主導権を握る時間を作れたクラブが勝っています。
- FC東京は国立開催で複数回勝利しており、東京開催との親和性が高い
- 鹿島は2023年の名古屋戦、2024年の横浜FM戦、2025年の川崎F戦で勝利し、大舞台を結果に変えている
- 神戸は2023年の鹿島戦、2024年の川崎F戦で勝ち、優勝争いや上位争いの文脈と国立開催を結び付けた
- 横浜FMは2024年のC大阪戦で大勝し、攻撃力が出れば会場要因よりチーム力が前に出ることを示した
国立だから勝つ、国立だから負ける、ではありません。普段のホームより特殊な舞台になる分、立ち上がりの集中、先制点、守備の整理がより見えやすくなる。そこを外したホーム側は、東京V、清水、町田、神戸のように敗戦も喫しています。
J2では勝ち切れなかったことも重要
J2の3試合がすべて引き分けだった点は、別の見方ができます。
町田対東京V、清水対千葉、清水対横浜FCはいずれも昇格争いやクラブの歴史性を帯びたカードでした。観客数も大きく、特に2024年の清水対横浜FCは55,598人を集め、J2の入場者記録を更新したと報じられています。
大観衆はホーム側を押し上げます。一方で、相手も集中力を上げてくる。J2の国立開催では、ホームクラブが「勝たなければいけない試合」に持ち込まれ、最後の一歩をこじ開けられなかった構図が見えます。
興行面では国立開催の効果は大きい
勝敗とは別に、国立開催の最大の意味は集客です。
Jリーグ公式の用語集では、2024シーズンから国立競技場開催の試合を「THE国立DAY」として位置づけ、より多くの人にJリーグの生観戦体験を届ける施策として説明しています。2026年1月以降は命名権により「MUFGスタジアム」となる点も明記されています。
実際、今回の対象試合にも5万人級の観客が並びます。
- 2025年 鹿島 2-1 川崎F:59,574人
- 2023年 名古屋 1-0 新潟:57,058人
- 2023年 FC東京 2-1 川崎F:56,705人
- 2023年 鹿島 2-0 名古屋:56,020人
- 2024年 FC東京 4-1 名古屋:55,896人
- 2024年 清水 1-1 横浜FC:55,598人
ホームクラブにとって、国立開催は通常の本拠地開催と違う収益機会になります。スポンサー露出、首都圏ファンへの接点、クラブのブランド発信、将来の観客開拓。勝点3だけでは測れない効果があります。
ただし、興行として成功した試合ほど、敗戦時の印象も強く残ります。5万人の前で勝てなかった試合は、サポーターの記憶に長く残る。ここが「国立は勝ちにくい」という印象を増幅させている可能性があります。
印象に残る試合は、勝敗より物語が濃い
国立開催の記憶に残る試合は、単にホームが勝ったか負けたかでは決まりません。
清水 3-5 横浜FM 8年ぶりのJリーグ国立開催で撃ち合い
2022年7月2日の清水対横浜FMは、新国立でのJリーグ開催として強いインパクトを残しました。清水がホーム扱いで56,131人を集めた一方、試合は横浜FMが5得点で勝利。国立開催の華やかさと、ホーム側が飲み込まれる怖さが同時に出た試合です。
この試合の印象が、「国立ホームは難しい」という語りの出発点になった面はあります。
清水 1-1 横浜FC J2記録を更新した大観衆
2024年9月28日の清水対横浜FCは、J2としては異例の55,598人を集めました。結果は1-1。昇格を争う両者にとって勝点1ずつとなり、ホームの清水にとっては勝ち切れなかった試合として残りました。
ただ、J2が国立でこれだけの観客を集めた事実は大きい。国立開催の価値は、J1の有名クラブだけのものではないことを示しました。
鹿島 2-1 川崎F 最多級の観衆を結果につなげた例
2025年5月11日の鹿島対川崎Fは59,574人。新国立でのJ1開催として大きな観客数を記録し、鹿島が2-1で勝ちました。
この試合は、国立開催がホームクラブの重荷になるだけではないことを示す好例です。大観衆、強度の高い相手、注目度の高いカード。その条件を鹿島は勝利に変えました。
結論 国立は不利ではないが、通常ホームとも違う
数字から出る結論は明確です。
国立開催のホームチームは、勝敗面で不利とは言えません。 むしろ2022年から2025年のJ1・J2リーグ戦では、ホーム勝率46.2%で、2020年以降のJ1全体平均40.9%を上回っています。J1だけに絞れば52.2%です。
ただし、国立開催を「普通のホームゲーム」と同じに扱うのも違います。
- 本拠地の慣れは薄くなる
- 観客数が増え、試合の注目度も上がる
- 相手にとっても特別な舞台になる
- 引き分けより勝敗がつく傾向が強い
- J2では大観衆でもホーム側が勝ち切れていない
次に見るべきは、単純な勝率だけではありません。国立開催でホーム側が先制した場合の勝率、後半の失点時間帯、通常ホームとの走行距離やシュート数の差まで追うと、国立が「武器」になる条件と「重荷」になる条件がさらに見えてきます。
現時点で言えるのは、国立はホームクラブを勝たせる魔法の場所ではないが、負けやすくする場所でもない、ということです。問題は会場ではなく、その特別な一日をチームがどう試合運びに変えられるかです。
参照リンク
- J.League Data Site 試合検索
- Jリーグ公式:鹿島vs名古屋 試合結果・データ 2023年5月14日
- Jリーグ公式:町田vs東京V 試合結果・データ 2023年7月9日
- Jリーグ公式:清水vs千葉 試合結果・データ 2023年7月16日
- Jリーグ公式:清水vs横浜FC 試合結果・データ 2024年9月28日
- World Soccer Data:Japan J1 League Stats 2020
- World Soccer Data:Japan J1 League Stats 2021
- World Soccer Data:Japan J1 League Stats 2022
- World Soccer Data:Japan J1 League Stats 2023
- World Soccer Data:Japan J1 League Stats 2024
- World Soccer Data:Japan J1 League Stats 2025
- Jリーグ用語集:THE国立DAY、国立競技場の名称変更
- スポニチ:J2歴代最多更新の4万7628人が入場 清水と千葉の国立対決
- スポニチ:清水対横浜FCでJ2記録を更新
- スポニチ:鹿島対川崎Fの国立決戦で59,574人
