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金沢の新スタは何を変えたのか ゴースタを「日常」と「街づくり」で見る

金沢の新スタは何を変えたのか ゴースタを「日常」と「街づくり」で見る

金沢ゴーゴーカレースタジアムがもたらした最大の変化は、ツエーゲン金沢に初めて「専用ホームの基準」を持ち込んだことです。

一方で、同時期に開業した広島のエディオンピースウイング広島や、2024年10月に開業した長崎のPEACE STADIUM Connected by SoftBankと同じ物差しで見ると、少し見誤ります。金沢の価値は、街なかの巨大集客装置や巨大複合開発というより、地域クラブの試合日と非試合日を地続きにした、等身大のフットボール拠点にあります。

  • 金沢は、ツエーゲン金沢の観戦体験とクラブ運営の土台を変えた
  • 広島は、街なか立地を生かして都市の回遊を強く押し上げた
  • 長崎は、ホテル・商業・オフィスまで抱えた「目的地型」の開発として動いている
  • だから3つは似た「新スタ」でも、役割はかなり違う

ここがポイント: 金沢の新スタは、広島や長崎のような大型都市開発の縮小版ではない。クラブと地域の距離を毎週縮めるための、Jリーグ地方クラブ向けの現実的なモデルとして効いている。

目次

金沢ゴーゴーカレースタジアムが金沢にもたらしたもの

まず見えるのは、サッカーを見る環境そのものの変化です。

金沢ゴーゴーカレースタジアムは、Jリーグ公式で入場可能数10,728人。ツエーゲン金沢の案内ではピッチまで最短約7メートルで、南サイドの「ウェルカムゲート」は屋根であるだけでなく、声をピッチへ返す設計も意識されています。陸上トラックのある競技場とは違い、プレーの強度も、ベンチワークも、サポーターの反応も近い。

これは単なる快適性の話ではありません。クラブが「ホームで何を売るか」を変える話です。

観戦体験がクラブの基準を変えた

2024年のツエーゲン金沢は、クラブ公式ヒストリーによるとJ3で平均来場者数5,435人、リーグ戦総来場者数103,256人を記録しました。J3で年間10万人を超えた意味は小さくありません。新スタジアムができたから自動的に強くなるわけではないにせよ、毎試合5,000人規模が専用スタジアムに集まる状態をつくれたのは、クラブの営業、演出、スポンサー提案の前提を変えます。

しかも金沢は、ただ「近い」だけで終わっていません。

  • キッズスペース付きの席や授乳室を備え、家族連れの導線を整えた
  • ワンウェイ式トイレや多機能トイレを整備し、滞在のストレスを下げた
  • ラウンジを備え、一般観戦から法人利用まで受け皿を広げた
  • 金沢駅や石川県庁からのシャトル、IR東金沢駅から徒歩圏という現実的なアクセスを組んだ

地方クラブの新スタで重要なのは、満員の一発ではなく、来場のハードルを毎試合少しずつ下げることです。金沢はそこに力点があるように見えます。

非試合日をつくり始めたことも大きい

金沢のもう一つの変化は、スタジアムを「試合専用」で閉じなかったことです。

公式サイトでは、フィールドやスタンドの時間貸しに加え、会議室、VIPラウンジ、ビジネスラウンジ、にぎわいスペースまで貸し出しています。2024年9月にはスタジアムツアーを開始し、ロッカー、記者会見室、大型映像操作室などを見学できるようにしました。さらに2025年にはスタジアムヨガも実施しています。

ここで重要なのは、派手さではなく使い方です。

広域集客の観光拠点になる前に、まず地域住民が「試合の日以外にも行ったことがある場所」になる。金沢の新スタは、その段階を踏んでいます。これは地方クラブにとってかなり大きい。試合に来ない人でも、ツアーやイベントで一度足を運べば、クラブとの接点が生まれるからです。

広島や長崎と何が違うのか

違いは、規模だけではありません。立地と事業の設計思想が違います。

広島は「街なか回遊」を生むスタジアム

エディオンピースウイング広島は、約28,520席。県庁前駅や紙屋町西電停、広島バスセンターから徒歩約10分という、Jリーグでもかなり強い街なか立地です。

サンフレッチェ広島は2025年の主催公式戦総入場者数が602,944人、J1リーグだけでも486,116人、1試合平均25,585人を記録しました。クラブ自身が「365日にぎわう広島の新しいシンボル」と表現している通り、ここは試合会場にとどまりません。広島市は2026年の「二十歳を祝うつどい」を同会場で開き、約1万人が参加しました。

つまり広島の新スタは、サンフレッチェのホームであると同時に、都心回遊と都市イベントの受け皿として機能しています。駅前や繁華街の消費とつながりやすいのが金沢との大きな差です。

長崎は「スタジアム単体」ではなく複合都市開発

長崎スタジアムシティはさらに性格が違います。公式概要では、約20,000席のスタジアムに加え、243室のホテル、商業施設、オフィス、アリーナを束ねた約1,000億円規模の複合施設です。2025年10月の開業1周年時点で、公式発表の総来場者数は485万人に達しました。

ここで回っているのは観戦需要だけではありません。

  • 試合観戦
  • 宿泊
  • 飲食
  • 買い物
  • オフィス利用
  • アリーナイベント

つまり長崎は、クラブのホーム整備というより、スタジアムを核にした目的地開発です。消費単価も滞在時間も、金沢や広島とは別の勝負をしています。

3つを並べたとき、金沢の価値はどこにあるか

金沢は広島ほど都心回遊に直結していません。長崎ほど巨大複合開発でもありません。

それでも価値が薄いわけではなく、むしろ逆です。

Jリーグの多くの地方クラブにとって、広島や長崎のモデルは魅力的でも、そのまま再現するのは難しい。中心市街地の大規模再編や、スタジアムを核にした1,000億円級の開発は、どこでもできる話ではないからです。

その点で金沢は、

  • 1万人規模前後の専用スタジアム
  • 家族連れや法人利用まで見据えた設計
  • 試合がない日の貸館・体験プログラム
  • 地域クラブの営業基盤を厚くする運用

という形で、地方クラブが現実的に目指しやすい中間モデルを示しています。

派手な数字では広島や長崎に及ばなくても、クラブと地域の接点を毎週積み上げる力はある。金沢の新スタがもたらしたものを一言でいえば、そういう変化です。

これからの注目点

最後に、金沢には課題も残っています。

ツエーゲン金沢は2026年2月24日、バックスタンド屋根の復旧工事に伴うホームゲーム運用変更を発表しました。新スタジアムは完成した瞬間がゴールではなく、維持管理と運用改善まで含めて価値が決まることを、この件は示しています。

今後を見るなら、焦点はこの3つです。

  • 屋根復旧を含む施設運用をどう安定させるか
  • ツアーや一般利用をどこまで定着させられるか
  • 新しい観戦体験を、ツエーゲン金沢の競技面と事業面の成長につなげられるか

広島は都市の回遊装置、長崎は複合消費の目的地。金沢はそのどちらでもなく、地域クラブの暮らしに近いスタジアムです。その違いを理解すると、ゴースタの価値はかなりはっきり見えてきます。

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