東京ヴェルディはなぜ今年は勝点を積めるのか 昨季との違いを得点力と判断基準で読む
東京ヴェルディの今年の変化を先に言うと、守って耐えるだけのチームではなくなったことが大きい。直近では4月18日のジェフユナイテッド千葉戦、4月29日の鹿島アントラーズ戦、5月3日の柏レイソル戦と勝利を重ね、5月6日の川崎フロンターレ戦で0-1と止まったものの、流れそのものは明確に上向いている。
数字で見ると違いはもっとはっきりする。2025年の東京ヴェルディはリーグ38試合で23得点。今季は公式順位表ベースで14試合17得点まで伸ばしており、昨季の同じ14試合時点が9得点だったことを考えると、攻撃の量も質も別物だ。
- 2025年最終成績は38試合23得点、17位
- 2025年の14試合時点は4勝5分5敗、9得点14失点
- 2026年は14試合で17得点17失点、得点源も分散
- 5月2日の城福浩監督の言葉どおり、今年は「勝点1を守る」発想ではなく、前向きな判断を基準にしている
ここがポイント:
去年との最大の違いはシステム名ではなく、ボールを前へ運ぶ判断をチーム全体で共有できていることだ。
何が起きているのか 直近の流れを整理する
まず事実関係から押さえたい。
2026年の東京ヴェルディは、4月18日に千葉を1-0で下し、4月29日には鹿島に2-1で勝利。5月3日には柏を1-0で破った。鹿島戦では熊取谷一星と吉田泰授が決め、首位級の相手を前半のうちにひっくり返したのが象徴的だった。
一方で、5月6日の川崎F戦は0-1で敗戦。好調をそのまま無傷で伸ばしているわけではない。ただ、昨季のように得点が入らず苦しくなる期間が長く続くチーム像とは、かなり違う場所にいる。
昨季との比較で目立つ数字
昨季の14試合時点と比べると、今年は次の差がある。
- 得点は9から17へ増加
- 勝利数は4から6へ増加
- 失点は14から17で大幅改善ではない
- つまり、今年の好調は「失点激減」ではなく得点増が中心にある
ここは重要だ。東京ヴェルディが今年良くなった理由を「堅くなったから」とだけ説明すると、実態を取りこぼす。むしろ、多少失点しても取り返せるチームになりつつあることのほうが大きい。
去年と何が違うのか
1. 城福監督が求める判断が、後ろ向きではなくなった
5月2日の囲み取材で城福監督は、相手を大きなクラブだと見て勝点1を守る発想で入ると、斜め前へのパスが横パスに、横パスがバックパスになると語った。これは精神論ではなく、プレー選択そのものの話だ。
東京ヴェルディの基本表記は今季も3-4-2-1が中心だが、去年との違いは並びの名前よりも、その中で誰がどの方向へ判断するかにある。前に差し込む、運ぶ、押し返す。この基準が揃うと、同じ3-4-2-1でも相手を押し込む時間が増える。
鹿島戦の逆転勝ちは、その変化が最も見えやすい試合だった。先に失点しても引かなかった。前半34分に熊取谷一星、40分に吉田泰授。追いつくだけで終わらず、前半のうちに勝ち越したことに、今年の東京Vらしさが出ている。
2. 染野唯月だけに寄らない得点構造になった
昨季のチーム得点王は染野唯月の5得点だった。チーム全体でも23得点しか取れず、誰か一人が止まると攻撃全体が細る構図だった。
今季の得点ランキングを見ると、染野が4得点、吉田泰授も4得点、福田湧矢が2得点。そのほか山見大登、松橋優安、齋藤功佑、熊取谷一星、寺沼星文、新井悠太にも得点がある。
- 染野だけで完結していない
- 後列や2列目からも点が出ている
- ベンチを含めた複数の選手が結果に絡んでいる
この分散は、連戦で効く。城福監督が6連戦を前に「普段準備をし続けている選手」が問われると話していた通り、先発固定だけで走り切る設計ではない。誰が出ても守備強度を落とさず、さらに違う場所から点を取れる形に少しずつ近づいている。
3. 守備は完成形ではないが、攻守のつながりは良くなった
今年の14試合17失点だけを見ると、守備が鉄壁になったとは言えない。実際、川崎F戦では0-1で落としているし、失点数だけなら課題は残る。
それでも手応えがあるのは、城福監督が柏戦前に語ったように、相手のビルドアップやクロスに対する守備強度を90分間落とさないことをチームの土台にしているからだ。守備を固めるために引き込むのではなく、奪った後のカウンターや押し返しまで含めて守備を設計している。
去年は0-0や0-1の試合が多く、1点を失うと苦しくなる展開が目立った。今年はまだ荒さが残る一方で、攻撃に出る意志があるぶん、試合の主導権を取り返す場面が増えている。
好調の見方はどう分かれるか
ここは少し整理して見たい。東京ヴェルディの現在地には、評価しやすい点と慎重に見るべき点が両方ある。
前向きに評価できる点
- 昨季38試合23得点だったチームが、今季14試合で17得点まで伸ばしている
- 鹿島戦のように先に失点してもひっくり返せる
- 染野唯月以外の得点者が増え、攻撃が一本足ではない
- 監督コメントと実際の試合内容がつながっている
まだ保留したい点
- 失点数は少なくなく、守備の安定感が完全に固まったわけではない
- 川崎F戦のように、競った試合を落とす場面は残っている
- 連戦が続く中で、前向きな判断をどこまで維持できるかは次の検証ポイント
つまり、今年の東京Vは「完成した強豪」ではない。ただし、「去年のように我慢だけで残留を探るチーム」からは確実に離れている。
次に見るべきポイント
今後の焦点は、良くなった攻撃を上位相手や連戦の中でも維持できるかだ。
- 5月10日 FC東京戦
- 5月16日 水戸ホーリーホック戦
- 5月24日 横浜F・マリノス戦
この並びは分かりやすい試金石になる。前向きな判断を崩さずに勝点を拾えるなら、今年の東京ヴェルディは「好調」ではなく、上位争いに絡む現実的な勢力として見直す必要がある。逆にここで再び得点が止まるなら、変化は本物でも、まだ持続力の段階に課題があるということになる。
