北海道から宮崎へ――セレッソ大阪の夏季キャンプは「新監督の設計図」を試す2週間だった
東川町での栃木シティ戦は1-0、宮崎での愛媛FC戦は3-1。セレッソ大阪は2026/27シーズン開幕前、気候も対戦条件も異なる2つのキャンプを重ねた。
この夏の核心は、単なる体力づくりではない。7月3日に就任が発表されたパブロ・マチン監督の戦い方を、短期間でチームへ落とし込むことにあった。
この記事で分かることは次の通りだ。
- 北海道・東川町キャンプと宮崎キャンプの日程、会場
- 2試合のトレーニングマッチが示した現在地
- 新監督の下で注目したい戦術面と選手間競争
- 練習見学やファンサービスの注意点
- 2026/27シーズン開幕後に確認すべきポイント
2つのキャンプを時系列で整理
セレッソ大阪は、東川町で新体制を立ち上げ、宮崎で実戦量を増やす流れを組んだ。
北海道・東川町キャンプ
クラブ発表による実施期間は、2026年7月7日から16日まで。会場は北海道上川郡東川町の「東川町ゆめ公園 天然芝サッカー場」だった。
東川町は、Jリーグのシーズン移行に伴うセレッソ大阪初の夏季キャンプ地として準備を進めてきた自治体だ。天然芝サッカー場も新たに整備され、6月にはオープニングセレモニーが開かれている。
キャンプ中の主な予定は以下の通りだった。
- 7月7日〜16日:東川町でトレーニング
- 屋外練習と室内トレーニングを組み合わせて実施
- 7月15日:栃木シティと45分×2本のトレーニングマッチ
- 7月16日:移動日
栃木シティ戦はセレッソ大阪が1-0で勝利した。報道によると、前半3分に上門知樹が右からのクロスに合わせて得点。新体制最初の実戦を白星で終えた。
ただし、評価すべきなのは勝敗だけではない。スポーツニッポンの報道で小見洋太は、ポジショニングや相手の追い方、どのコースを消すかといった戦術面について細かな指導を受けている趣旨を説明している。新監督の要求が、まず守備時の立ち位置から具体化されていたことが分かる。
宮崎キャンプ
続く宮崎キャンプは、クラブ発表で7月19日から25日まで。主会場は国際海浜エントランスプラザ多目的広場だった。
7月21日の愛媛FC戦のみ、会場が宮崎県屋外型トレーニングセンターへ変更された。試合は45分×3本で行われ、セレッソ大阪が3-1で勝利している。
- 7月19日:午前練習、午後は室内
- 7月21日:愛媛FCとのトレーニングマッチ
- 7月22日:午前・午後の2部練習
- 7月23日:非公開練習
- 7月25日:キャンプ期間終了
東川町の栃木シティ戦が90分相当だったのに対し、愛媛FC戦は135分相当。より多くの選手へ実戦時間を配分し、組み合わせを確認できる設定だった。
最大の目的はマチン監督の戦術導入
2週間のキャンプは、前体制の成果を残しながら、新監督の原則へ切り替える準備期間だった。
セレッソ大阪は、明治安田J1百年構想リーグを全体3位で終えた。アーサー・パパス前監督の下で積み上げた攻撃的なスタイルと、若手を実戦で成長させた成果は、新シーズンでも生かしたい土台である。
一方、クラブは7月3日にパパス監督の退任とマチン氏の監督就任を相次いで発表した。チーム始動が7月4日、東川町での活動開始がその直後だったため、新監督が選手を把握し、約束事を伝える時間は限られていた。
ここがポイント: 東川町と宮崎の連続キャンプは、完成した戦術を磨く期間というより、新監督が選手の特徴を見極めながら共通ルールを定着させる期間だった。
守備の開始位置をそろえられるか
栃木シティ戦後に伝えられた小見の説明からは、マチン監督が守備を感覚任せにせず、誰がどこへ寄せ、どのコースを閉じるかまで整理しようとしていたことが読み取れる。
前線の選手が追っても、中盤や最終ラインが連動しなければ、相手には簡単に前進される。逆に全体の距離がそろえば、高い位置でボールを奪い、そのまま短い手数でゴールへ向かえる。
キャンプ後に見るべきなのは、プレスの勢いだけではない。
- 最初に相手へ寄せる選手が明確か
- その動きに合わせて後方が押し上げているか
- ボールを奪えなかった際に中央を閉じられるか
- 奪った直後、前方へ走る選手とボールを保持する選手が整理されているか
この連動が開幕から安定すれば、前体制で育てた攻撃力を、より良い位置でのボール奪取につなげられる。
2試合4得点をどう見るか
キャンプ中の対外試合は、栃木シティ戦が1-0、愛媛FC戦が3-1だった。合計4得点、1失点という数字は、新体制の出発としては前向きだ。
ただし、得点者や出場メンバーが限られた試合だけで、攻撃の完成度や序列を決めることはできない。対戦相手も試合時間も異なるうえ、トレーニングマッチでは選手交代や負荷設定が公式戦とは違う。
重要なのは、次の2点を分けて見ることだ。
- 結果面:2試合とも勝利し、合計で得点が失点を上回った
- 内容面:狙った形で前進、奪取、決定機創出ができたかは公式戦で継続確認が必要
特に愛媛FC戦は45分×3本だった。長い実戦時間の中で3得点を挙げたことは、複数の組み合わせを試しながら攻撃機会を作ったという点で意味を持つ。一方、1失点した局面については、配置変更時の連係や運動量低下との関係を、開幕後の試合と照らして見たい。
選手間競争は「新監督の役割に合うか」で再スタート
キャンプでの競争は、過去の序列よりも、新しい配置と役割に適応できるかが軸になる。
クラブはキャンプ告知で参加メンバー一覧を公表していない。そのため、帯同や離脱を推測して個々の立場を決めつけることは避けたい。
公式に確認できる材料では、百年構想リーグで若手と中核選手が結果を残している。
- 石渡ネルソン:WESTベストヤングプレーヤー賞
- 横山夢樹:5月度WEST月間ヤングプレーヤー賞
- 田中駿汰:5月度WEST KONAMI月間MVP
- 柴山昌也:大会終了時に7アシストでランキング首位タイ
これらは単なる受賞者一覧ではない。新監督には、前体制で伸びた若手の推進力と、中盤を支える選手の判断力を、新しい仕組みの中でどう配置するかという課題がある。
注目したい3つの競争
公式戦で特に確認したいのは、次の役割だ。
-
最前線の基準点
相手を背負うだけでなく、守備のスイッチを入れ、周囲が押し上げる時間を作れるか。 -
中盤の配置を整える選手
前へ出る局面と後方を埋める局面を判断し、攻守の間延びを防げるか。 -
幅と背後を同時に使うサイドの選手
タッチライン際で相手を広げるのか、内側へ入ってゴールへ近づくのか。周囲との役割分担が重要になる。
名前だけで序列を予想するより、誰がこの3つの仕事を安定して遂行しているかを見る方が、新体制の方向性をつかみやすい。
見学したサポーターに求められたルール
両キャンプは見学機会が設けられた一方、練習内容の保護と安全を優先する運用だった。
東川町、宮崎ともに、クラブはスケジュール変更の可能性を明記。練習中と練習試合中は動画撮影を禁止し、メニュー、戦術、メンバー、選手のコンディションなどをSNSへ投稿しないよう求めた。写真撮影は認められていた。
宮崎では暑熱環境を考慮し、ファンサービスをハイタッチに限定。サインと個別の写真撮影は実施しなかった。実施日も限定され、トレーニングマッチや非公開練習の日はファンサービスが行われていない。
現地見学で押さえておきたい要点は次の通りだ。
- 公開日時は直前にも変更される可能性がある
- 室内トレーニングと非公開練習は見学できない
- 動画撮影は禁止、写真撮影は可能
- 戦術や選手状態が分かる情報はSNSへ投稿しない
- 駅、空港、ホテルなど公共の場所での出待ちはしない
- ファンサービスの内容と実施時間は当日の案内に従う
今後の公開練習でも、出発前にクラブ公式サイトのトップチームスケジュールを確認する必要がある。
キャンプ後に見るべき4つのポイント
キャンプの評価は勝敗だけで完結せず、2026/27シーズンの公式戦で再現できるかによって決まる。
セレッソ大阪は7月29日にボルシア・ドルトムントとの国際親善試合を組み、8月から明治安田J1リーグの新シーズンへ入る。強度の高い相手との実戦を経て、キャンプで整理した原則を公式戦仕様へ近づける段階だ。
今後は次の4点に注目したい。
- 前線、中盤、最終ラインが連動して守備を始められるか
- ボール奪取後の攻撃が個人任せになっていないか
- 主力と若手を入れ替えても配置のバランスを保てるか
- リード時とビハインド時で、交代策が明確に機能するか
東川町で1点を守り切り、宮崎では3点を奪った。この2試合は好材料だが、まだ設計図を実戦へ移した最初の段階にすぎない。
最初の公式戦で見るべき場面は、派手な得点だけではない。相手のビルドアップに対し、最前線の選手が動いた瞬間、後ろの選手が同じ方向へ動けるか。そこに、2週間のキャンプの成果が最もはっきり表れる。
参照リンク
- セレッソ大阪「北海道・東川町キャンプ トレーニングスケジュールについて」(2026年7月6日)
- セレッソ大阪「宮崎キャンプ トレーニングスケジュールについて」(2026年7月16日)
- セレッソ大阪「2026年7月 トップチームスケジュール」
- セレッソ大阪「7/15 セレッソ大阪vs栃木シティ トレーニングマッチ LIVE配信決定のお知らせ」(2026年7月13日)
- セレッソ大阪「パブロ マチン氏 監督就任のお知らせ」(2026年7月3日)
- セレッソ大阪「アーサー パパス監督 退任のお知らせ」(2026年7月3日)
- セレッソ大阪「6/6 FC東京戦 試合結果」
- セレッソ大阪「Jリーグシーズン移行に伴う、初の夏季トレーニングキャンプ地が北海道 東川町に決定!」(2025年3月1日)
- セレッソ大阪「東川町天然芝サッカー場オープニングセレモニー」(2026年6月14日)
- セレッソ大阪「7/29 ドルトムント戦 試合結果」
- ライブドアニュース/スポーツニッポン「C大阪が今季初実戦J2栃木シティ戦で1―0勝利」(2026年7月15日)
