名古屋グランパスはミシャサッカーで生まれ変わったのか?
2026年4月4日のセレッソ大阪戦終了時点で言えば、答えは半分イエス、半分ノーだ。名古屋はミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下で、前線の迫力と得点の取り方を確かに変えた。
ただし、まだ「別チームになった」と言い切るには早い。5得点を奪う試合がある一方で、長崎と神戸には完敗。攻撃は新しくなったが、試合を安定して支配する段階までは届いていない。
ここがポイント: 名古屋はミシャ体制で「攻め筋」は増えたが、「強いチームの再現性」はまだ作り切れていない。
- 結論は、攻撃面では変化が明確、守備と試合運びは発展途上
- 4月4日のC大阪戦までのリーグ9試合で、名古屋は14得点10失点、勝点16
- 山岸祐也が6得点で前線を牽引し、木村勇大や和泉竜司、甲田英將らの役割もはっきりしてきた
- 一方で、長崎に1-3、神戸に0-3。強度の高い相手に押し返された試合は重い材料だ
まず何が変わったのか
一番分かりやすい変化は、ゴール前に入る人数と、前線の距離感だ。
長谷川健太体制の名古屋は、守備の強度と速い切り替えに軸足を置いていた。対してペトロヴィッチ監督のチームは、3バックを土台にしながら、前線3人と両サイドがより高い位置で絡み、相手陣内で押し込む時間を増やそうとしている。
それは結果にも表れている。4月4日までのリーグ戦を並べると、振れ幅ごと今の名古屋が見えてくる。
- 2月8日 清水エスパルス戦: 1-0勝利
- 2月15日 ガンバ大阪戦: 0-0、PK勝ち
- 2月21日 V・ファーレン長崎戦: 1-3敗戦
- 3月1日 ファジアーノ岡山戦: 1-1、PK負け
- 3月7日 アビスパ福岡戦: 5-1勝利
- 3月14日 ヴィッセル神戸戦: 0-3敗戦
- 3月18日 サンフレッチェ広島戦: 2-1勝利
- 3月22日 京都サンガF.C.戦: 1-1、PK負け
- 4月4日 セレッソ大阪戦: 3-0勝利
この並びを見ると、名古屋は「勝てる形」を作り始めている。ただ、相手に主導権を握られた時のもろさも消えていない。
生まれ変わったと言える部分
ここははっきりしている。前線の得点源が整理され、攻撃の出口が増えたことだ。
山岸祐也がゴール前の基準点になった
C大阪戦では後半開始直後に先制し、53分にも追加点。福岡戦でも2得点を記録しており、4月4日時点でリーグ戦6得点まで伸ばした。
山岸の重要性は、単に決めるからではない。前線で収める、競る、背後を取る、その全部を一人で担えるからだ。ミシャサッカーでは前線の1枚が止まるだけでは足りず、周囲を動かす起点になれるかが大きい。その意味で、今の名古屋は山岸を中心に攻撃の軸を作れている。
木村勇大が「もう一人のFW」で効いている
木村は開幕の清水戦、福岡戦、広島戦で得点。山岸と並んで前線の強度を上げ、相手CBを休ませない役割が大きい。
木村がいることで、名古屋は単純なクロス待ちではなくなる。背後への走り込み、前からの圧力、こぼれ球への反応が増え、攻撃が一段立体的になった。
2列目とサイドの関与が増えた
甲田英將は京都戦で得点。和泉竜司はC大阪戦で3点目を決めた。福岡戦では稲垣祥、終盤には森壮一朗も加点している。
つまり、名古屋の得点が特定の1人だけに偏っていない。山岸と木村が前線を動かし、その周囲が2列目から刺してくる形が少しずつ見え始めている。ここは、就任時から外部メディアでも「堅守速攻から保持型への転換」が注目点として挙げられていた部分と重なる。
それでもまだ生まれ変わったと言い切れない理由
問題は、良い時間帯の質に比べて、90分の安定感がまだ足りないことだ。
失点が重い試合では一気に崩れている
長崎戦は1-3、神戸戦は0-3。この2試合だけで6失点した。
特に神戸戦は、名古屋も16本のシュートを打ちながら無得点で終わった。攻める形を作っても、試合全体の主導権を取り返せず、逆に相手の強度と効率に飲み込まれた。この差は小さくない。
ミシャサッカーは、攻撃時の立ち位置が前掛かりになるぶん、ボールを失った後の整理が甘いと一気に苦しくなる。名古屋が今まさに向き合っているのはそこだろう。攻撃の人数は増えたが、押し返された時の耐性はまだ完成していない。
振れ幅が大きい
福岡に5-1で勝った直後、神戸には0-3で敗れた。広島には2-1で勝ったが、京都には先制しながらPK負け。C大阪には3-0で快勝した。
この波の大きさは、変化の途中にいるチームの典型でもある。新しいスタイルで相手を押し切れる日がある一方、試合を落ち着かせる術や、悪い流れを小さく終える術はまだ不十分だ。
周囲の見方をどう整理するか
評価が割れやすいのは当然だ。ここまでの名古屋には、楽観できる材料と慎重に見るべき材料が両方ある。
前向きに見られる点
- 開幕9試合で14得点は、攻撃の変化を示す数字として十分に大きい
- 山岸、木村の2トップ気味の関係性が機能し始めている
- C大阪戦のように、後半立ち上がりで一気に試合を動かせる爆発力がある
- PK決着を含む特殊レギュレーションの中でも、勝点16まで積み上げた
慎重に見るべき点
- 9試合で10失点。上位を本気で狙うにはまだ多い
- 強度の高い神戸戦で0-3と完敗した事実は消えない
- 先制しても押し切れない試合があり、試合管理はまだ途上
- 攻撃が前向きになるほど、守備の整理が試される
ここまでを踏まえると、名古屋は「ミシャの形が見えないチーム」ではもうない。しかし、「ミシャの形で安定して勝てるチーム」になったともまだ言えない。
次に見るべきポイント
4月11日にはアウェーでヴィッセル神戸と再戦する。ここが大きい。
C大阪戦の3-0は、変化の手応えとしては十分だった。ただ、本当に生まれ変わったかを測る基準は、神戸のように強度が高く、試合の細部で甘さを見逃さない相手にもう一度ぶつかった時に出る。
次の注目点は絞りやすい。
- 山岸祐也と木村勇大の前線が、神戸の守備に再び押し返されないか
- サイドと2列目が高い位置を取った時、失った後の回収が間に合うか
- 先に流れを失った時間帯でも、試合を壊さずに耐えられるか
名古屋は確かに変わり始めた。 ただし、今はまだ「生まれ変わったチーム」ではなく、「生まれ変わりつつあるチーム」だ。4月11日の神戸戦は、その違いを最もはっきり映す90分になる。
