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左利きの司令塔はFC今治をどう変えるのか――パロチェヴィッチ加入をセットプレーと中盤配置から読む

左足のキックでCKを蹴るFC今治の中盤選手をイメージしたサムネイル。

左利きの司令塔はFC今治をどう変えるのか――パロチェヴィッチ加入をセットプレーと中盤配置から読む

FC今治が得たのは、前線へボールを運ぶ人数を増やす補強というより、攻撃の「最後の一手」を左足で選べるMFだ。背番号26のアレクサンダル・パロチェヴィッチは、中央で前を向く時間をつくり、流れの中でもプレースキックでも相手守備の基準点をずらせる可能性がある。

ただし、加入しただけで攻撃が自動的に変わるわけではない。アベル・モウレロ・ロペス監督の新体制で、彼の立ち位置と周囲の走り出しをどう結び付けるか。そこが補強の成否を決める。

  • パロチェヴィッチはセルビア出身、32歳の左利きMF。FC今治では背番号26を着用する
  • 主戦場になり得るのは、中央で前を向ける攻撃的MF、または右寄りから左足を生かす中盤の役割
  • 最大の注目点は、流れの中のラストパスだけでなく、CK・FKを含めたセットプレーの質をどう上げるかにある
目次

まず確定していること――背番号26で新体制に加わった

パロチェヴィッチはFCソウルから完全移籍で今治に加わり、2026/27シーズンの登録一覧ではMF・背番号26として掲載されている。

FC今治は6月25日、FCソウルからの完全移籍加入を発表した。当初のリリースではメディカルチェック後の正式契約予定とされていたが、6月28日付のトップチーム在籍選手一覧には背番号26のMFとして名前が載り、7月5日の新体制発表でも新加入選手として紹介されている。クラブの加入発表では、身長180cm、体重70kg、利き足は左と公表された。

経歴にはセルビア、ポルトガル、韓国、中国のクラブが並ぶ。韓国では浦項スティーラース、FCソウルでプレーした。Kリーグ公式は、浦項在籍時の2020年にリーグ戦で14得点6アシストを記録し、Kリーグ1のベストイレブンに選ばれたと紹介している。これは今治で同じ数字を保証する材料ではないが、ゴールとアシストの両方で試合を動かした実績があることは重要だ。

一方で、クラブの公式発表は具体的な起用ポジションやセットプレーのキッカーを明言していない。以下は公表されたプロフィールとチーム編成を踏まえた戦術的な見立てであり、固定的な役割を断定するものではない。

ここがポイント: 左利きのMFを中央に置く価値は、パスの本数ではなく、相手DFラインの背後・ニアゾーン・逆サイドへ出す球種を増やせることにある。

攻撃を作り直すなら、中央の「受け手」から始めたい

今治が最初に整えるべきなのは、パロチェヴィッチがボールを受けた瞬間に前線が動き出せる配置である。

彼を単に中盤で配球する選手として低い位置へ置くと、左足の最終局面での価値が薄れやすい。むしろ相手の中盤ラインと最終ラインの間、あるいは右のハーフスペースで前を向ける回数を増やしたい。そこで時間を得れば、左足で斜めに差し込むパス、逆サイドへの展開、シュートという複数の選択肢を同時に持てるからだ。

4-2-3-1なら「10番の場所」を共有する

4-2-3-1を基調にするなら、パロチェヴィッチはトップ下だけに留まらず、右寄りへ流れて左足を内側へ向ける形が考えられる。

その場合、前線の選手に必要なのは足元への寄り過ぎを避けることだ。受け手が同じ場所に集まれば、創造性は混雑の中で消える。代わりに、次の動きが連動すると選択肢が生まれる。

  • 1トップがCB間、または背後へ走り、縦パスの通り道を作る
  • 左サイドの選手が幅を取り、逆サイドへの展開を受ける準備をする
  • 右SBまたは右のウイングが外側を追い越し、パロチェヴィッチの左足に「内か外か」の判断を与える

今治のMFには新井光、梶浦勇輝、山田貴文、駒井善成、持井響太、加藤潤也らがいる。そこにパロチェヴィッチが加わることで、誰か一人を外すというより、試合の局面ごとに「運ぶ役」「受ける役」「最後を選ぶ役」を分けやすくなる。特に相手が中央を閉じる展開では、前を向ける選手を一人増やすことが攻撃の停滞を防ぐ。

3バック系なら右の内側に居場所がある

3バックを土台にする場合も、右ウイングバックが幅を取るなら、右の内側に左利きのMFを置く形は合理的だ。外へ開いた味方を使うだけでなく、相手の左SBと左CBの間へ左足でボールを差し込める。

重要なのは、彼に守備の全てを背負わせないことだ。前進局面で高い位置を取るなら、ボールを失った直後に誰が中央を閉じるのかを周囲が共有する必要がある。攻撃の自由度は、失った後の最初の数秒を設計して初めて機能する。

セットプレーは「得点源」だけでなく、相手の守備を変える武器になる

パロチェヴィッチの左足がもたらし得る最大の上積みは、CK・FKで相手に守り方の選択を迫れることだ。

左利きのキッカーがいると、右CKからはゴールへ向かうインスイング、左CKからは外へ逃げるアウトスイングを使い分けやすい。もちろん実際に誰がキッカーを担うかはチーム内の競争次第だが、球質の選択肢が増えるだけで、相手はニア、ファー、こぼれ球のいずれを優先するかを固定しにくくなる。

今治にはエジガル・ジュニオ、ウェズレイ・タンキ、櫛引一紀といった高さを使える選手がいる。セットプレーで狙いを一つに絞るより、ニアへ走る役、中央で競る役、ファーでこぼれ球を狙う役を分けられれば、キッカーの武器はより生きる。

狙うべきは「直接得点」だけではない

セットプレーの価値は、直接決まる場面に限らない。良いボールが入ると相手は守備人数を増やし、クリアの方向も限定される。二次攻撃で回収できれば、流れの中で崩せない相手にももう一度ゴール前へ入れる。

パロチェヴィッチを起点にするなら、見るべき数字はCKからの得点数だけではない。

  • 最初の競り合いに勝てた回数
  • クリアボールを自陣へ戻さず回収できた回数
  • FKやCKの後にシュートまでつながった回数
  • セットプレーを警戒する相手が流れの中で空けたスペース

この観点で改善が出れば、左足の補強は得点者を増やす以上の意味を持つ。

新体制で問われるのは、個人技より周囲との接続だ

モウレロ監督の下でパロチェヴィッチを生かす鍵は、彼に多く触らせることではなく、触るたびに前進が起きる関係を作れるかにある。

FC今治は7月5日のキックオフカンファレンスで、アベル・モウレロ・ロペス監督を含む2026/27シーズンの新体制を発表した。監督は「ファン・サポーターの皆さんがこのFC今治というチームを本当に誇りに思って、僕たちの背中をいつでも押してもらえるようなチーム作りをしていきたい」と語っている。新体制発表は、補強を単独の即効薬ではなく、チームを組み直す過程として見るべき理由にもなる。

評価が分かれるのは、次の二点だろう。

期待できる点

  • 左足でゲームの向きを変えられるため、相手が一方向の守備に絞りにくくなる
  • ゴール前での最後のパス、ミドルシュート、プレースキックを一人の選手が選べる
  • 若い選手を含む中盤に、判断の基準となる経験を持ち込める可能性がある

適応で確認したい点

  • 日本の公式戦での強度とテンポに、どれだけ早く合わせられるか
  • 守備への切り替え時に、周囲のMF・SBとどこまで役割分担できるか
  • 前線との距離が近過ぎて、彼の視野と左足を窮屈にしてしまわないか

パロチェヴィッチ自身は加入時、「クラブファミリーの一員になれてとても嬉しい。皆さんと共に夢を実現し、多くの勝利を共に分かち合えることを願っています」とコメントした。まずは華やかな個人成績を急ぐより、ボールを受ける位置、プレースキックの担当、前線との連係が試合ごとにどう定着するかを追いたい。

最初の数試合で見るべき三つの場面

補強の効果は、得点やアシストだけでは測れない。次の三場面を見れば、今治の攻撃が本当に変わり始めたかを判断しやすい。

  1. 相手が引いた時に、中央で前を向けているか
    パロチェヴィッチが背負ったまま終わるのか、それとも味方の動きで前を向けるのか。ここがラストパスとミドルシュートの出発点になる。

  2. 右の内側と外側を使い分けられているか
    左足を持つMFの近くに、外を走る選手と背後を狙う選手が同時にいるか。相手守備に二つの選択を強いる形が作れているかを見たい。

  3. CK・FK後の二次攻撃を回収できているか
    ボールの質だけでなく、跳ね返された後にもう一度押し込めるか。セットプレーは、この回収局面まで含めて初めて攻撃の武器になる。

背番号26の左足は、今治の攻撃を一人で完結させるためのものではない。周囲が走る場所を共有できれば、流れの中でもセットプレーでも、相手に「どこを消すべきか」という新しい問いを突き付けられる。新体制の序盤は、彼のプレー数ではなく、その問いに対して味方がどれだけ答えられているかが最大の観察点になる。

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