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2試合で見えた「修正力」と選手層――清水エスパルスのオーストリアキャンプ総括

2試合で見えた「修正力」と選手層――清水エスパルスのオーストリアキャンプ総括

開始6分で先制されても、ピッチ上で守備の役割を整理して逆転する。相手の前進を許した前半から、後半にプレスを合わせて主導権を取り戻す。

清水エスパルスが2026年7月に行ったオーストリアキャンプで、最も大きな収穫となったのは、この試合中の修正力だった。一方、メンバーを入れ替えた時間帯には強度と戦術理解の差も表れた。開幕前に成果と課題の両方が見えたキャンプである。

この記事で分かることは次の通りだ。

  • キャンプの日程、開催地、公開範囲
  • 2試合の結果と得点者
  • 吉田孝行監督が落とし込んだ攻守の狙い
  • 新加入選手、若手、既存戦力の競争状況
  • 8月8日の名古屋グランパス戦までに詰めたい課題
目次

7月10日から20日まで、チロル州で実戦重視の11日間

清水は2026年7月10日から20日まで、オーストリア・チロル州のゼーフェルト・イン・チロルで欧州キャンプを実施した。

クラブ発表では、現地でのトレーニングとトレーニングマッチはすべて公開。7月10日の移動後、11日から練習を始め、14日にウクライナ1部のポリッスヤ・ジトミール、18日にドイツ2部のカールスルーエSCと対戦した。

主な流れは以下の通りだ。

  • 7月10日:オーストリアへ移動
  • 7月11日:午前・午後の2部練習
  • 7月12日:午前・午後の2部練習
  • 7月13日:戦術確認と11対11の紅白戦
  • 7月14日:ポリッスヤ・ジトミールとのトレーニングマッチ
  • 7月15日:リカバリー
  • 7月16~17日:戦術・フィジカル両面のトレーニング
  • 7月18日:カールスルーエSCとのトレーニングマッチ
  • 7月20日:帰国

初日の練習は、長距離移動後のストレッチやロンド、7対7のミニゲームが中心だった。翌日から負荷と戦術濃度が上がり、GKを含む8対8ではプレス回避と連動した守備を確認。フルコートでは、最終ラインからの組み立て、サイドチェンジ、前線からのプレスに出る位置を詰めた。

つまり、単なるコンディション調整ではない。8月のリーグ開幕に向け、選手が迷わず動ける共通ルールを実戦の速度で定着させることが中心だった。

ここがポイント: 欧州勢との2試合は結果を求める場であると同時に、相手の配置やボールの動かし方を見て、清水がピッチ内で解決策を選べるかを試す場だった。

ポリッスヤ戦は3-1、先制された後の修正が収穫

最初の実戦ではハイプレスのずれが出たが、清水は試合中に原因を整理し、3-1の逆転勝利につなげた。

7月14日のポリッスヤ・ジトミール戦では、開始6分に左サイドを崩され、ミドルシュートで先制を許した。前線からのプレスもかみ合わず、相手のビルドアップを止められない時間が続く。

転機はハイドレーションブレイクだった。誰がどのコースを消すのかを整理すると、前線で守備を機能させられる場面が増えた。21分にはディエギーニョが敵陣でセカンドボールを拾い、木下康介のクロスを北川航也が左足のボレーで決めて追いついた。

後半に当たる2本目では、フィールドプレーヤー10人を全員変更。そこでジャーメイン良が2得点を挙げた。

  • 1点目:藤井智也のパスを受けた松崎快が左ポケットからクロス。ジャーメインがファーで合わせた
  • 2点目:千葉寛汰が前線で奪ってスルーパス。抜け出したジャーメインが左足で決めた

終盤には、前から追い続けずに撤退して守る形も試した。状況に応じて守備位置を変えながら、1失点で試合を終えた点には意味がある。

ジャーメイン良の得点以上に重要だった役割

ジャーメインの2得点は、新加入選手が早くも結果を出したというだけではない。前線の守備、サイドを含む複数ポジションへの対応、カウンター時の走力を同時に確認できた。

吉田監督はキャンプ中、メンバーを固定せず、意図的にポジションと組み合わせを変える方針を示した。長いリーグ戦では負傷や出場停止が起きる。誰かが欠けたときに同じ狙いを保てるかという視点で見ると、ジャーメインの多機能性は選手層を厚くする。

カールスルーエ戦で再現した「前半観察、後半修正」

2試合目でも立ち上がりは苦しんだが、90分単位では3-1。ポリッスヤ戦で見せた修正を、別の相手にも再現した。

7月18日のカールスルーエSC戦は45分×4本で行われ、90分の試合を2本こなす形だった。雷雨のため4本目途中で中止となったが、クラブレポートでは合計4得点が記録されている。

1~2本目では、序盤に前線からのプレスが外れ、ドイツ2部の相手に前進を許した。それでも本多勇喜から須貝英大、住吉ジェラニレショーンから藤井智也への対角のロングフィードを使い、サイドから攻撃する形を作った。

ハーフタイム後は相手の前進方法に守備を合わせ、前向きにボールを奪う場面が増加。2本目には次の3得点を挙げ、90分を3-1で終えた。

  • 木下康介:北川航也との連係から須貝英大がスルーパス。GKの動きを見てループシュート
  • ジャーメイン良:針生涼太の左クロスを流し込む
  • 辻友翔:前線のプレスでボールを引っかけ、対外試合デビューで得点

3本目では、右ウイングで起用された北爪健吾が背後へ抜けて得点した。その後は相手にボールを持たれ、守備の帰陣やプレス強度に課題を残している。

2試合に共通したもの

対戦相手のリーグも布陣も異なる。それでも清水の試合経過には共通点があった。

  1. 立ち上がりは前線のプレスがかみ合わない
  2. 相手の前進方法をピッチ内とハーフタイムで整理する
  3. 守備の狙いを合わせ、前向きに奪える回数を増やす
  4. 奪った後はサイドの背後やポケットを使って得点する

完成されたチームなら、序盤から相手を封じたい。ただしプレシーズンでは、想定外の問題に対して選手自身が答えを出せるかも重要になる。二つの試合で同じ修正過程を踏めたことは、偶然の逆転勝利より価値がある。

攻撃は前線に集中、守備は全員の水準が課題

得点者の分散は前線の選択肢を示した一方、メンバー交代後も同じ強度を保つところまでは届かなかった。

キャンプ中の2試合で、清水は確認できる範囲で計7得点。内訳はジャーメイン良が3得点、北川航也、木下康介、辻友翔、北爪健吾が各1得点だった。

得点の形も一つではない。

  • 敵陣でセカンドボールを回収してからのクロス
  • 前線で奪って素早く背後を突く攻撃
  • 対角のロングフィードからサイドへ展開
  • 相手を押し込まず、カウンターで空いた場所を使う形

センターフォワードだけに得点を依存せず、サイドや途中出場選手もゴールへ入れた点は好材料だ。北川は得点だけでなく、カールスルーエ戦で右サイドの連係にも関与。木下は相手DFと競りながら味方へボールを落とし、前進の起点となった。

一方、カールスルーエ戦の3~4本目では、戻るべき位置への帰陣、プレスの連動、個々のプレー強度に不足が出た。吉田監督も、全員が高い水準で戦う必要性を指摘している。

これは控え組だけの問題ではない。先発候補が疲労したとき、交代選手が同じ守備基準を維持できなければ、試合終盤にチーム全体が押し下げられる。リーグ戦で勝点を積み上げるには、最初の11人だけでなく、交代後の配置まで機能させる必要がある。

新加入と若手が競争を動かした

キャンプは既存戦力の調整だけでなく、新加入選手と若手を実戦の役割へ組み込む場になった。

ウォン・ドゥジェは途中合流

ウォン・ドゥジェは7月16日のトレーニングから合流した。カールスルーエ戦までの準備期間は短く、キャンプだけで適応を評価するのは早い。

それでも、戦術ボードを使った説明、ポゼッション、切り替え、対戦相手の3-5-2を想定したメニューを経験できた。帰国後は周囲との距離感や、ボールを奪った後の立ち位置をどこまで合わせられるかが焦点になる。

辻友翔は守備から得点へつなげた

加入内定の立場で参加した辻友翔は、キャンプ前半に負傷のため十分な練習ができなかった。それでも最終戦では、前線からの守備でボールを奪って得点した。

吉田監督が細かく求める守備と、辻が自身の強みとして挙げるスピードが結びついた場面だ。若手の得点という話題性だけでなく、チームの原則に沿ったプレーで結果を出した点が重要になる。

高橋祐治は実戦復帰

ポリッスヤ戦では、高橋祐治がおよそ1年ぶりに実戦へ復帰した。すぐに公式戦の出場可否へ結びつけることはできないが、対外試合のピッチへ戻れたこと自体が一つの段階となる。

選手層を広げるには、復帰選手が練習強度に耐え、複数の組み合わせで守備の連係を作れるかを継続して確認する必要がある。

吉田孝行監督が求めたのは「タイトル基準」

キャンプの評価軸は練習試合の勝敗だけではなく、タイトルを狙うチームとして日々の強度をそろえられるかだった。

吉田監督はキャンプ中、海外の良い環境を楽しむためではなく、タイトルという目標のために来ていると選手へ伝えた。2026/27シーズン新体制発表でも、スタートダッシュに向けて実戦を積み、戦術理解を深める方針を示している。

この言葉を試合内容と重ねると、要求は具体的だ。

  • 前線の誰が、相手のどのコースを消すのかを共有する
  • ボールを奪った瞬間にサイドの背後を狙う
  • 相手の配置に応じて、前から追うか撤退するかを選ぶ
  • メンバーが替わっても、帰陣位置とプレー強度を落とさない

ポリッスヤ戦とカールスルーエ戦では、最初の三つに前進が見えた。最後の一つは課題として残った。ここが、キャンプを「2試合とも勝った」で終わらせてはいけない理由である。

次に見るべきは8月8日の名古屋グランパス戦

キャンプの成果が本物かは、2026/27明治安田J1リーグ開幕戦で、同じ修正力と強度を発揮できるかで測られる。

清水のリーグ初戦は8月8日19時、豊田スタジアムでの名古屋グランパス戦。帰国から開幕までは約3週間あり、国内の暑さへの再適応と、先発・交代要員の絞り込みが進む期間となる。

開幕戦へ向けた注目点は三つだ。

  • 立ち上がりのプレス:欧州で2試合続けて出たずれを、開始直後から抑えられるか
  • 前線の組み合わせ:北川、木下、ジャーメインらの特徴をどう組み合わせるか
  • 交代後の強度:途中出場選手が守備位置と切り替え速度を維持できるか

オーストリアでは、問題が起きた後に直す力を示した。次は、問題を早く察知し、失点する前に直せるか。豊田スタジアムで最初に確認したいのは、キャンプの勝敗ではなく、その一段先の変化だ。

※トレーニングや試合予定は変更される場合があります。最新情報は清水エスパルス公式サイトでご確認ください。

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