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高知ユナイテッドSCの好スタートは本物か 吉本岳史体制で進む「前から奪う」再設計

高知ユナイテッドSCの好スタートは本物か 吉本岳史体制で進む「前から奪う」再設計

2025年のJ3で18位だった高知ユナイテッドSCが、2026年春は明らかに違う顔を見せている。結論から言えば、好スタートの土台は偶然ではなく、吉本岳史監督の下で整理された前線守備と、若手の推進力にベテランの判断を足したチーム設計にある。

もちろん、3月29日の徳島ヴォルティス戦のような強度の高い相手を越えてこそ本物と言える。ただ、3月24日更新のJリーグ公式チームスタッツで高知は14得点を記録しており、春先の話題としては十分に追う価値がある。

目次

まず何が起きているのか

高知は2026年シーズンに向けて陣容を大きく入れ替えた。地元メディアの整理では、オフに6割以上の選手が入れ替わり、クラブは「若手とベテランの融合」を補強の軸に据えたという。その中心にいるのが、クラブをJリーグ参入へ導いた経験を持ち、今季復帰した吉本岳史監督だ。

開幕後の流れも分かりやすい。

  • 2月8日、カターレ富山に3-1で勝利
  • 2月15日、FC大阪と2-2で引き分け、PK戦で敗戦
  • 2月22日、ツエーゲン金沢に3-2で勝利
  • 3月1日、奈良クラブに2-0で勝利
  • 3月7日、アルビレックス新潟と2-2、PK戦で勝利
  • 3月14日、FC今治に2-0で勝利

3月14日の今治戦プレビュー時点で、高知はWEST-Aの2位、3勝0敗、PK戦は1勝1敗。3月3日のJリーグ公式マンスリーレポートでも「J3の高知が堂々首位に立つ」と取り上げられた。前年18位のクラブが、春先にここまで明確な上振れを見せるのは珍しい。

高知の攻撃は「持つ」より「刺す」型だ

高知の特徴は、ボール保持で相手を押し込むことではない。Jリーグ公式の3月24日更新チームスタッツでは、高知の平均ボール支配率は47.0%。リーグ全体で見れば支配型ではなく、むしろ中位からやや下の数字だ。

それでも得点は取れている。理由は、ボールを持つ時間よりも、相手陣でプレーを完結させる回数と質が高いからだ。高知は同じ3月24日更新スタッツで14得点を記録し、1試合平均得点は2.0。さらにシュート決定率も15%台と高水準にある。

ここで重要なのは、高知が「少ない手数で終わる」だけのカウンターチームではない点だ。3月10日更新の公式スタッツではシュート総数78本でリーグ4位。つまり、高知は打たないチームではなく、打てる位置まで一気に運ぶ回数が多い。保持率が高くなくても、相手ゴール前へ到達する設計がはっきりしている。

右サイドの速さとクロスの質が、得点パターンを作っている

個別の試合を見ると、得点の入り方にも傾向がある。

3月7日の新潟戦では、前半4分に三門雄大のクロスを新谷聖基が合わせて先制。さらに前半33分には福宮弘乃介のクロスから関野元弥が追加点を決めた。3月1日の奈良戦でも、杉山伶央のクロスを佐々木敦河が合わせて均衡を破っている。

この並びから見えてくるのは、外からの単純な放り込みではなく、相手を押し下げたあとにサイドで時間を作り、走り込む選手に合わせる形が整っていることだ。関野、佐々木、新谷、杉山、高野裕維、藤森隆汰と、得点やアシストに絡む選手が前線の特定個人に偏っていないのも大きい。

相手からすると、9番だけを消せば終わるチームではない。前線の運動量に加え、2列目やサイドの選手が次々にフィニッシュへ入ってくるため、守備側の基準点がずれやすい。

若手の強度に、三門雄大のような経験値が乗っている

今季の高知を語るうえで、編成の話は外せない。地元の高知さんさんテレビは年明けの段階で、補強テーマを「若手とベテランの融合」と伝えていた。副キャプテンの三門は、その文脈を象徴する存在だ。

三門自身も1月のコメントで、アグレッシブな若い選手たちが気持ちよくプレーできるように支えたいと語っていた。これは単なる精神論ではない。実際、新潟戦では三門のクロスが先制点を生み、試合の入りを決めた。若い選手が走り、ベテランが判断する。この役割分担が見えている。

キャプテン小林大智も開幕前に「高知県を盛り上げて、一つにできるように」と話していたが、今の高知は熱量だけで走っているわけではない。3月14日の今治戦ではシュート数こそ5本だった一方で2-0で勝ち切った。奈良戦のように23本を打って押し切る日もあれば、今治戦のように効率よく仕留める日もある。ここが昨季との違いだろう。

立場ごとの見方を整理するとどう見えるか

監督・クラブ側の見方

クラブ側のメッセージは一貫している。吉本監督の復帰と大幅刷新を通じて、もう一度アグレッシブな高知を作り直すこと。そのために、若手だけでもベテランだけでもなく、両者を混ぜる編成を選んだ。

地元メディアの見方

地元メディアは、2025年の18位からの巻き返しを「若手とベテランの融合」で説明している。派手な大型補強というより、吉本体制に合う選手を集め、チームの強度を引き上げたという見方だ。

データ・分析側の見方

Jリーグ公式スタッツを見ると、高知は保持率よりも得点力、シュート量、決定率で存在感を出している。Football LABでも3月上旬時点でシュートポイントがリーグ上位にあり、感覚的な「勢い」だけでなく、相手ゴールへ迫る回数そのものが多いことが示されていた。

今後の注目点は「再現性」と「守備の伸びしろ」

高知の好スタートを本物にする条件は2つある。

1つ目は、強い相手にも同じ形を再現できるか。3月29日の徳島戦は、その試金石になる。徳島は公式スタッツ上でも守備面の数字が優秀で、簡単には走らせてくれない相手だ。

2つ目は、守備の安定感をどこまで上げられるか。奈良戦、今治戦ではクリーンシートを達成したが、金沢戦は3-0から終盤に2点を返され、新潟戦も2点リードを守り切れなかった。前から奪う設計は魅力だが、強度が落ちた時間帯をどう締めるかは、今後の順位争いで必ず問われる。

それでも、2026年春のJリーグで「今読む価値があるテーマ」を1つ挙げるなら、高知ユナイテッドSCはかなり有力だ。前年18位のクラブが、保持率ではなく前進力、クロス、複数得点源、そして編成の噛み合わせでここまで景色を変えてきた。その変化は、単なる開幕ダッシュとして片づけるには少し大きい。

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