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躍進し続けた栃木シティ、今季苦戦の要因は?

躍進し続けた栃木シティ、今季苦戦の要因は?

栃木シティが苦しんでいる最大の理由は、攻撃が完全に止まったからではない。失点の増え方が、これまでの“勝ち切る流れ”を先に壊していることにある。

2026年4月12日更新のJリーグデータサイトでは、栃木シティは明治安田J2・J3百年構想リーグEAST-Aで10試合を終えて9位。2勝、PK勝ち1、PK負け1、6敗、11得点22失点、得失点差はマイナス11となっている。

  • 2025年J3は23勝8分7敗、69得点37失点で優勝
  • 2026年EAST-Aは10試合で11得点22失点
  • 開幕4試合で仙台、秋田、横浜FC、湘南に4連敗
  • 群馬戦、相模原戦ではPK戦に持ち込んだが、90分で勝ち切る試合はまだ限られる
  • 田中パウロ淳一、鈴木武蔵、山下敬大らが得点している一方、守備側の耐久力が順位に直結している

昨季までの快進撃は本物だった。だからこそ、今季の苦戦は単なる反動では片づけにくい。相手の強度が上がった中で、先に失点し、追いかける時間が長くなり、攻撃の選択肢まで狭くなる。その連鎖が、現在の順位に表れている。

目次

何が起きているか:10試合で見える変化

まずは事実関係を押さえたい。栃木シティは2025年にJ3を制し、クラブ史上初のJ2昇格を決めた。Jリーグ公式は2025年11月23日、J3第37節の結果をもって翌シーズンのJ2昇格が決まったと発表している。

サッカーキングによれば、今矢直城監督体制4年目の2025年は23勝8分7敗、勝点77でJ3優勝。関東1部、JFL、J3を駆け上がった勢いは、数字でもはっきりしていた。

ただ、2026年の地域リーグラウンドEAST-Aでは入りが重かった。

  • 第1節:栃木C 1-4 仙台
  • 第2節:栃木C 0-1 秋田
  • 第3節:横浜FC 5-1 栃木C
  • 第4節:栃木C 1-3 湘南
  • 第5節:栃木C 1-1 群馬、PK戦で敗戦扱い
  • 第6節:八戸 0-1 栃木C
  • 第7節:栃木SC 3-2 栃木C
  • 第8節:山形 1-2 栃木C
  • 第9節:栃木C 0-0 相模原、PK戦で勝利扱い
  • 第10節:栃木C 2-4 仙台

勝った八戸戦と山形戦は大きい。特にアウェイで勝点を取り切った試合があることは、チームが崩壊しているわけではない証拠だ。

一方で、10試合22失点は重い。1試合平均2.2失点。昨季J3の37失点は38試合での数字だったため、今季は失点ペースがかなり上がっている。

ここがポイント: 栃木シティの問題は「得点力不足」だけではない。11得点は取れているが、22失点によって試合の入り、交代策、終盤のゲーム管理まで難しくなっている。

苦戦の要因1:上位級の相手に守備の基準を引き上げられた

栃木シティは昨季まで、カテゴリーを上げながらも主導権を握る時間を作ってきた。だが今季のEAST-Aは、仙台、湘南、秋田、山形、横浜FCなど、J2以上の強度や経験を持つ相手が並ぶ。

開幕から仙台、秋田、横浜FC、湘南と続いた日程は厳しかった。しかも結果は4連敗。ここで勝点を失っただけでなく、チームの守備基準を一気に問い直される形になった。

早い時間帯の失点が試合を変える

Jリーグ公式の湘南戦記録では、栃木シティは前半12分にアルトゥール・シルバ、43分に藤井智也、後半50分に山田寛人に決められ、76分の齋藤恵太の得点で1点を返した。シュート数は栃木Cが10、湘南が12。CKは栃木Cが10、湘南が4だった。

この数字だけ見れば、一方的に押し込まれ続けた試合ではない。だがスコアは1-3。つまり、ボールを前に運ぶ場面やセットプレーの機会を作っても、失点のタイミングが悪いと試合の設計が崩れる。

栃木シティは前に出たいチームだ。先に失点すると、前線と最終ラインの距離が伸びやすくなる。相手はそこを使って追加点を狙う。昨季なら押し返せた局面でも、今季は相手の個人能力と判断速度が一段高い。

“耐える時間”の質が順位を分けている

昇格組が上のカテゴリーで苦しむとき、攻撃の形ばかりが注目される。しかし栃木シティの場合、より重要なのは守備の時間帯だ。

  • 相手がギアを上げた10分間を無失点で終えられるか
  • 先制された後、次の失点までの間隔を空けられるか
  • セットプレーやクロス対応で、跳ね返した後のセカンドボールを拾えるか
  • 交代直後の配置変更で、守備の担当を曖昧にしないか

この部分が安定すれば、11得点を取れている攻撃はもっと生きる。逆に、失点が止まらなければ、鈴木武蔵や田中パウロ淳一が点を取っても追いつかない。

苦戦の要因2:前線の顔ぶれは豪華でも、昨季の連動は作り直しになった

今季の栃木シティは、名前だけ見れば攻撃陣に期待感がある。Jリーグ公式の選手名鑑では、鈴木武蔵が栃木シティ所属として登録されている。元日本代表FWで、Jリーグ初出場は2012年、初得点は2013年。前所属には横浜FC、北海道コンサドーレ札幌、ガンバ大阪などが並ぶ。

一方で、昨季の推進力を支えた選手の入れ替わりもあった。FC町田ゼルビアは2026年1月、栃木シティへ期限付き移籍していたバスケス・バイロンの復帰を発表。2025年J3優勝に関わったピーター・ウタカも契約満了が報じられている。

つまり、栃木シティは「補強したからそのまま強くなる」という単純な状態ではない。

得点者は出ているが、攻撃の入口が安定しない

Jリーグデータサイトの出場記録では、10試合時点で田中パウロ淳一が3得点、鈴木武蔵と山下敬大が2得点。森俊貴、吉田篤志、西谷和希、齋藤恵太も得点している。

得点者が分散しているのは悪くない。だが、相手の圧力が強い試合では、前線へ良い状態でボールを届ける回数が減る。鈴木武蔵のように背後を狙えるFWがいても、押し込まれたままでは走るスペースも、味方の押し上げも足りなくなる。

攻撃の問題は、最後のシュートだけではない。

  • ビルドアップの出口をどこに作るか
  • セカンドボールを拾った直後、縦へ急ぐか、保持して整えるか
  • 田中パウロ淳一の仕掛けを孤立させない距離を保てるか
  • 鈴木武蔵の動き出しに対して、2列目とサイドが同時に入れるか

こうした接続の部分が詰まると、前線の能力は点ではなく単発のプレーになる。栃木シティが昨季のように相手を押し切るには、個の迫力をチームの連続攻撃に戻す必要がある。

苦戦の要因3:シーズン途中の補強は即効薬にも、調整課題にもなる

栃木シティは3月19日、スポルチ・レシフェからMFペドロ・アウグストの完全移籍加入を発表した。Jリーグ公式によれば、ペドロ・アウグストはブラジル出身の29歳で、ブラジルやポルトガルでプレーしてきた選手だ。

これは中盤の強度や前進力を補う意味で重要な補強だろう。実際、Jリーグデータサイトの出場記録では、ペドロ・アウグストは加入後に出場している。

ただし、途中加入の選手が入ると、チームは良くも悪くも組み直しになる。

  • 守備時にどの高さで奪いに行くか
  • ボール保持時に誰が最初の前進役になるか
  • 周囲の選手がペドロ・アウグストの立ち位置に合わせて動けるか
  • 警告や出場停止も含め、起用の継続性をどう確保するか

補強はプラス材料だ。しかし、今の栃木シティに必要なのは「良い選手を入れること」だけではない。新戦力を入れながら、失点しない配置と距離感を早く固めることが求められる。

立場ごとの見方:悲観だけではないが、課題は明確

栃木シティの現状は、見る立場によって評価が分かれる。ここを混ぜてしまうと、議論がぼやける。

公式データが示す見方

公式データから見れば、最も重いのは失点数だ。10試合22失点、得失点差マイナス11。順位は9位。数字だけなら、上位争いよりもまず守備の修正が先になる。

ただし、10試合で11得点はゼロではない。攻撃の材料は残っている。だからこそ、守備を整えれば勝点の取り方は変えられる。

監督コメントから見えるチーム像

今矢直城監督は続投発表時、2026年も栃木シティで指揮を執るにあたり、チームとともに成長し、大胆にチャレンジする趣旨のコメントを出していた。Number Webのインタビューでも、2025年は「優勝」と言い切ることでチームの基準を明確にしたことが語られている。

その文脈で見れば、今季の苦戦は方針転換の失敗というより、上の基準にぶつかった現在地だ。問題は、挑戦の姿勢を保ったまま、どこまで現実的に守備のリスクを減らせるかにある。

サポーター目線で気になる部分

サポーターにとっては、失点の多さと同時に、昨季のような「押し切れる空気」が薄く見える試合が気になるはずだ。開幕4連敗の印象は大きい。横浜FC戦の1-5、仙台との2試合で計6失点は、どうしても記憶に残る。

一方で、八戸戦の1-0、山形戦の2-1、相模原戦の0-0からのPK勝ちは、チームが踏みとどまった試合でもある。完全に流れを失っているわけではない。

次に見るべきポイント

栃木シティが浮上するには、派手な連勝より先に、試合の壊れ方を止めることが必要だ。

特に見るべきは次の4点になる。

  • 前半の失点数:先に追いかける展開をどれだけ減らせるか
  • 複数失点の試合数:1失点で止めれば、攻撃陣の得点が勝点につながる
  • 鈴木武蔵への配球:孤立したロングボールではなく、2列目が近い状態で使えるか
  • ペドロ・アウグストの定着:中盤の強度と前進役をどこまで担えるか

栃木シティの躍進は、偶然ではなかった。だが、上のカテゴリーでは「勢い」だけでは守備の穴を隠せない。

今季の苦戦の本質は、勝ち方を忘れたことではなく、勝つ前に試合を壊される場面が増えたことだ。次に必要なのは、もう一度派手に殴り勝つことではない。まず1失点で止め、前線の得点を勝点に変えること。そこを取り戻せるかが、栃木シティの春以降を決める。

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