MENU

ドルトムント来日で見るべきは勝敗ではない――セレッソ大阪、FC東京との2試合が映す「新シーズンの輪郭」

日本で行われるドルトムントとJクラブの親善試合をイメージしたサッカー場面。

ドルトムント来日で見るべきは勝敗ではない――セレッソ大阪、FC東京との2試合が映す「新シーズンの輪郭」

ボルシア・ドルトムントのBVB Evonik Japan Tour 2026は、7月29日にセレッソ大阪、8月1日にFC東京と対戦する。親善試合だからこそ、スコア以上に確かめたいものがある。新監督ニコ・コヴァチの下で、ドルトムントがどの強度と配置を日本で再現するのかだ。

セレッソ戦は香川真司と古巣の再会に注目が集まる。一方、FC東京戦は国立競技場で、J1百年構想リーグで上位に入った東京の守備と、ドルトムントの前進の仕組みがぶつかる。Jリーグを追う側にとっても、欧州クラブの個人技を見るだけの2試合ではない。

  • 7月29日(水)19時:セレッソ大阪 vs ボルシア・ドルトムント(ヤンマースタジアム長居)
  • 8月1日(土)19時:FC東京 vs ボルシア・ドルトムント(国立競技場)
  • 注目の軸:前線からの守備、中央での前進、若手の起用、そしてJクラブが試合の主導権をどう取りにいくか
目次

まず押さえたい2試合の位置づけ

このツアーはドルトムントにとって、2026-27シーズンの完成度を示す場ではなく、競争を始める場になる。 チームは7月中旬に始動し、日本遠征の後にはアーセナルとの親善試合、さらに8月22日のバイエルン戦(スーパーカップ)を控える。

そのため、日本での先発11人を「開幕の答え」と受け取る必要はない。むしろ見るべきは、交代後も保たれる原則だ。ボールを失った直後に誰が前へ出るのか。最終ラインの前にどれだけ選択肢を置くのか。リードしても前から奪いにいくのか。こうした反復のほうが、新シーズンの輪郭をよく映す。

ここがポイント: 親善試合では選手交代で構成が変わる。だからこそ、顔ぶれではなく「交代後も残るプレー原則」を追いたい。

セレッソ大阪戦は、再会を試合の入り口にできる

セレッソ大阪とドルトムントは、2026年初めから育成を軸とするパートナークラブ関係にある。香川真司はドルトムントで2010年から2012年、2014年から2019年にプレーし、現在もセレッソ大阪に所属する。再会自体に物語性があるのは確かだ。

ただし、試合の価値はそれだけにとどまらない。セレッソは2026年のJ1百年構想リーグを3位で終え、FC東京との3・4位決定戦は第1戦が2-2、第2戦は敵地で3-1とした。短期決戦で結果を取り切ったチームが、欧州の強豪を相手にどこまで自分たちの距離感を崩さず戦えるか。その問いが、この試合の中身になる。

FC東京戦は、より広いピッチでの前進を見たい

FC東京は同リーグを4位で終えた。国立競技場で行われる第2戦は、ツアーの締めくくりであると同時に、ドルトムントにとっては遠征中の負荷が積み重なった状態でのテストになる。

FC東京が低い位置で耐えるだけなのか、それとも前から奪いにいく時間をつくるのかで、見える景色は大きく変わる。相手の背後を狙わせるのではなく、中盤で奪って短い距離から攻める回数を増やせれば、親善試合でもJクラブの持ち味を示せる。

ドルトムントは「高い強度」をどこまで持ち込むか

最大の注目点は、コヴァチ体制の運動量と切り替えが、準備段階でもチーム全体に共有されているかどうかだ。 ドルトムントは7月14日の始動日に、パス練習、小集団でのゲーム、切り替え、シュート練習を実施したと公式に伝えている。コヴァチ監督は高いテンポを要求した。

昨季のブンデスリーガ公式データでは、ドルトムントはリーグ戦でインテンシブラン24,449回、スプリント5,662回を記録した。これらは試合の優劣を単独で決める数字ではない。しかし、ボール保持だけではなく、奪い返す局面に多くの走力を割くチームであることは読み取れる。

見るべきは守備の「最初の一歩」

前から守備をするチームは、FWが相手CBへ寄せる場面だけを見ても全体像は分からない。重要なのは、その直後だ。

  • 1人目が寄せた後、近くのMFがパスコースを消せているか
  • サイドへ追い込んだ時、SBまたはWBが前に出る決断をできているか
  • 奪えなかった時、最終ラインが背後のスペースをどう管理するか

Jクラブ側には、最初のプレスを外した後のプレーが問われる。無理に縦へ急がず、いったん逆側へ逃がして相手の守備の向きを変えられるか。あるいは、前を向いた選手の近くに3人目を走らせ、次のパスを出せるか。欧州の強度は、球際だけでなく判断の猶予を縮める。その違いを実感できる場面になるはずだ。

3-4-2-1だけを追いかけない

ドルトムントは昨季、3-4-2-1で戦う試合もあった。だが親善試合で重要なのは、フォーメーション表記よりも、攻撃時に誰が中央へ入り、誰が幅を取るかである。

3バック系の配置では、両ウイングバックが高い位置を取れば、相手のサイド守備を広げられる。その代わり、中央で失った時は広いスペースを守らなければならない。セレッソとFC東京がそこへ素早くボールを運べるかは、単発のカウンターではなく、相手の攻撃をどこで終わらせられるかに直結する。

新加入と若手は「得点」より役割を見たい

日本遠征で最も予測しにくく、同時に最も価値があるのは、若手と新加入選手がどの役割を任されるかだ。 始動日のトレーニングには、育成部門から11人が参加し、新加入のジョアン・ガドゥ、ジャスティン・レルマも加わった。

この時期のテストマッチでは、出場時間の長さが序列をそのまま意味するとは限らない。コンディション調整、遠征メンバー、戦術の確認を同時に進めるからだ。それでも、次の3点には判断材料がある。

若手が「守備の外」に置かれるか、「中」に置かれるか

若手をサイドの高い位置に置けば、個人の突破やスピードを試しやすい。一方で中盤や最終ラインの近くに置くなら、監督が組織の中での判断を見ている可能性が高い。

ボールを受ける前に首を振れているか。プレスを受けても味方へ預け直せるか。守備で一度外されても、次のカバーへ戻れるか。親善試合の若手評価は、派手なゴールだけで決めるべきではない。

主力選手は「連係の基準」をつくれるか

ブンデスリーガ公式の登録情報には、GKグレゴール・コベル、DFニコ・シュロッターベック、MFユリアン・ブラント、FWセルー・ギラシらが名を連ねる。実際の来日メンバーや出場可否は試合直前まで変動しうるため、事前の名前だけで起用を断定することはできない。

仮に主力がピッチに立つなら、見るべきは得点数より、若手や新加入がその周囲でプレーを継続できるかだ。トップ選手が受ける場所、走り出すタイミング、守備で合図を出す場所は、チームの基準になる。Jクラブにとっても、その基準に対して自分たちの守備網がどれだけ機能するかを測れる。

Jクラブの側から見れば、2試合は違う課題を持つ

セレッソ大阪とFC東京は、同じ相手との親善試合でも同じ戦い方を選ぶ必要はない。 むしろ、相手の強度を利用して各クラブがどの局面を試すかが重要だ。

セレッソ大阪:前向きにボールを持つ時間をつくれるか

セレッソにとっては、香川を含む攻撃陣が相手のプレッシャーを背負った時に、中央で前を向く回数を増やせるかが一つの焦点になる。相手を引きつけてから前線へ通すのか、サイドで数的優位をつくるのか。ボールを持つ時間を失わないことが、守備の負担も減らす。

ドルトムントのプレスを外しても、次のパスが孤立すれば攻撃は続かない。受け手の近くにもう一人を置けるか。ここは育成年代にもつながる、再現性のあるテーマだ。

FC東京:奪った直後の最初のパスを急ぎすぎないか

FC東京は、相手が攻撃の人数をかけた直後にボールを奪う局面をつくりたい。だが、奪った直後に難しい縦パスを選び続ければ、ドルトムントに再び押し込まれる。

前進できる時は速く、難しい時は保持して味方を押し上げる。その使い分けができれば、強豪相手でも守備だけの試合にはならない。特に国立の大きな舞台では、守備の粘りと攻撃の継続を分けて考えるのではなく、つなげて評価したい。

ファンイベントも、クラブ間の接点として見ておきたい

今回のツアーは試合だけで終わらず、大阪と東京でファン向け企画が予定されている。 ドルトムントはツアー専用ページで両都市のファンアクティビティを案内している。

海外クラブの来日は、記念撮影や物販だけで完結しがちだ。しかし今回は、セレッソとドルトムントの育成連携、香川という両クラブを結ぶ選手、そして2つのJクラブとの対戦が重なる。ファンがクラブの文化や若手育成に触れる機会としても、試合前後の企画を見たい。

一方で、交流の熱量と試合評価は切り分けるべきだ。親善試合の雰囲気が良くても、ピッチ上で何を試し、何が通用しなかったかを見失わないことが、次の競技的な学びにつながる。

2試合で確認したい4つのポイント

勝敗だけでツアーを終わらせないために、見る場所を絞っておきたい。

  • ドルトムントの切り替え:先発と交代選手で、守備開始の速さは変わるか
  • Jクラブの前進:相手の最初のプレスを外した後、攻撃を継続できるか
  • 若手の役割:新加入・育成組が、どの位置でどんな判断を任されるか
  • 親善試合の成果:スコアではなく、次の公式戦へ持ち帰れる形が見えたか

セレッソ戦では再会の瞬間と、育成連携を支えるピッチ上の競争に注目したい。FC東京戦では、遠征最終盤のドルトムントに対し、どこまで自分たちの攻撃を続けられるかが焦点になる。日本の2試合で残るべきなのは、記念写真よりも、次のシーズンに再現できるプレーの基準だ。

参照リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次