清水エスパルスの運営会社が示した次の1年の売上高計画は、68億9700万円。前年の過去最高53億5300万円からの伸び幅は15億4400万円、率にして約29%になる。
ただし、同時に公表された入場者数の見込みは「リーグ戦36万人」だった。これは2025年の実績とほぼ同じ水準だ。
つまりこの計画は、スタジアムに来る人を増やして15億円を積む絵ではない。ではどこから積むのか。そこがこの数字を読む上での入り口になる。
ここがポイント: 売上高は約1.29倍を想定する一方、リーグ戦入場者数の見込みは前年実績並み。増収分は「来場者の頭数」以外から取りにいく計画になっている。
この記事で押さえること
- 公表された数字(68億9700万円/興行収入12億8500万円/リーグ戦36万人)の関係
- なぜ「2026年決算」と「26~27年シーズン予算」が並んで発表されたのか
- 入場者数が横ばいでも売上高が3割近く伸びる計画になりうる理由の整理
- 「想定」と「確定実績」の違い、そして現時点で公表が確認できていない部分
公表された数字を並べる
まず土台になる事実を固める。
清水エスパルスの運営会社である株式会社エスパルスは2026年9月24日、公式サイトに「第32期(FY2026.2~2026.6)事業報告」を掲載した。同じ内容を扱った静岡新聞(あなたの静岡新聞/at-S)は2026年9月25日付で、運営会社が24日に2026年決算と26~27年シーズンの予算を発表したと報じ、26~27年シーズン予算の売上高を68億9700万円、興行収入を12億8500万円、リーグ戦入場者数の見込みを36万人と伝えている。
前年の水準については、スポーツ報知が2026年4月28日付で、2025年度の売上高が53億5300万円で過去最高、当期純利益3400万円で7期連続黒字、ホームゲーム入場者数は35万人、1試合平均1万8803人だったと報じている。
| 項目 | 2025年(過去最高) | 26~27年シーズン想定 |
|---|---|---|
| 売上高 | 53億5300万円 | 68億9700万円 |
| 差額/伸び率 | +15億4400万円/約+28.8%(約1.29倍) | |
| 興行収入 | ―(公表確認なし) | 12億8500万円 |
| リーグ戦入場者数 | 1試合平均1万8803人 | 36万人(見込み) |
なお2025年のリーグ戦入場者数は、Jリーグ公式データサイトの年度別入場者数推移で、ホーム19試合・総数357,263人・平均18,803人と記録されている。
なぜ「2026年決算」と「26~27年予算」が並ぶのか
この発表がやや読みにくいのは、決算期そのものが組み替わっているからだ。
公式サイトに掲載された事業報告の対象期間は「FY2026.2~2026.6」。つまり第32期は2026年2月から6月までの5カ月間であり、通常の1年決算ではない。
理由はリーグ側の制度変更にある。Jリーグは2026年2月から6月にかけて、シーズン移行の端境期にあたる特別大会「明治安田Jリーグ百年構想リーグ」を開催した。そのうえで2026/27シーズンの明治安田J1リーグは20クラブ・第1節から第38節の日程で動いており、2026年8月に開幕して2027年6月に最終節を迎える。
比較する相手を間違えないために
- 第32期(2026年2月~6月)は5カ月の変則期間で、通年の数字とは比べられない
- そのため、クラブが提示した比較対象は「25年の53億5300万円」という通年の過去最高値
- 26~27年シーズンの68億9700万円は、秋春制に移った後の最初のフルシーズン予算にあたる
短い期を挟んだ結果、読者の目に入る数字は「5カ月の決算」と「1シーズンの予算」という性格の違うものが同時に並ぶ。ここを混ぜると、増収幅の意味を取り違える。
15億4400万円は、どこから積む計画なのか
この記事の核心はここにある。増収計画の内訳を、公表済みの数字から逆算してみる。
36万人という見込みは「増員計画」ではない
Jリーグ公式データサイトによれば、2025年のホームリーグ戦は19試合で357,263人、1試合平均18,803人。2026/27シーズンのJ1も38節制のため、ホームのリーグ戦は19試合になる。
36万人を19で割ると、1試合あたり約18,900人。2025年実績とほぼ同じで、差は+3,000人弱、率にすれば1%に満たない。
そしてホームスタジアムであるIAIスタジアム日本平の収容人数は19,594人(Jリーグ公式クラブページ)。平均18,900人前後という見込みは、収容の9割半ばを毎試合埋め続けることを前提にした数字だ。伸ばす余地としての空席が、そもそもほとんど残っていない。
興行収入12億8500万円の置かれ方
公表された興行収入12億8500万円は、売上高68億9700万円の約18.6%にあたる。36万人で割れば、来場者1人あたり約3,570円という計算になる。
つまり売上高の8割超は、リーグ戦の興行以外の部分が担う設計になっている。ここが「入場者数横ばいでも約29%増」という絵が成り立つ構造上の入り口だ。
増収余地として考えられる観点
以下はクラブが要因として公表した内容ではなく、公表済みの数字から整理した見立てである。一般に、来場者数が頭打ちのクラブが売上高を伸ばそうとする場合、次のような方向が考えられる。
- 単価の引き上げ:チケット価格帯の再設計、席種の細分化、飲食やホスピタリティ関連の一人あたり支出増
- 事業構成の変化:スポンサー収入やグッズ・物販、スクール・アカデミー事業など、入場者数に直結しない収入の拡大
- 期間要因:秋春制移行後の最初のフルシーズンにあたるため、対象期間に含まれる公式戦や関連事業の数が、5カ月の変則期とは根本的に異なる
- 新規の収入源:既存事業の延長ではない領域の上積み
どれがどの程度効くのかは、2026年9月25日時点で公表内容を確認できていない。確認できるのは、売上高・興行収入・リーグ戦入場者数という3点の輪郭までだ。
「想定」は実績ではない
最後に、数字の性格を押さえておきたい。
68億9700万円は予算であり、確定した実績ではない。53億5300万円は決算として締まった数字であり、この2つは同じ重みを持たない。予算は達成されることもあれば、下回ることも上回ることもある。
現場の側では、吉田孝行監督の2026/27シーズン指揮継続をクラブが2026年6月7日に発表しており、強化の枠組みは前シーズンから引き継がれている。一方で2026/27シーズンのJ1では、8試合を終えて3勝1分4敗・勝点10の12位(Jリーグ公式順位表、2026年9月25日確認)。順位と入場者数が連動しやすい以上、成績は予算の前提に触れうる位置にある。
現時点で確認できていない論点
- 68億9700万円の内訳(スポンサー収入、物販、その他収入などの区分別計画額)
- 増収要因としてクラブが挙げている具体的な施策
- 第32期(2026年2月~6月)の売上高・損益の確定値
いずれも2026年9月25日時点で、公表内容を確認できていない。
今後の注目点
- 36万人という見込みを、実際のリーグ戦動員が上回るか下回るか(19試合平均で約18,900人が分岐点)
- 興行収入12億8500万円に対する進捗、すなわち1人あたり単価が想定どおりに乗るか
- 2027年6月に終わる26~27年シーズンの決算で、68億9700万円との差がどちら側に出るか
数字を一言でまとめるなら、この計画は「もっと多くの人を呼ぶ」ではなく「同じ人数から、これまでより多くを生む」という設計に見える。日本平の空席がほぼ残っていない以上、次に問われるのは動員のグラフではなく、1人あたりいくらを積み上げられたかという内訳のほうになる。
参照リンク
- あなたの静岡新聞(at-S)「J1清水エスパルス 26~27年売上高、大幅増の68億円想定」(2026年9月25日)
- 清水エスパルス公式サイト「株式会社エスパルス 第32期(FY2026.2~2026.6)事業報告」(2026年9月24日)
- 清水エスパルス公式サイト「吉田孝行 監督 2026/27 シーズン指揮継続のお知らせ」(2026年6月7日)
- Jリーグ公式サイト「明治安田J1リーグ 順位表」(2026年9月25日確認)
- Jリーグ公式サイト「清水エスパルス 順位・成績」(2026年9月25日確認)
- Jリーグ Data Site「年度別入場者数推移」(2026年9月25日確認)
- Jリーグ公式サイト「2026/27明治安田Jリーグ(第1節~第38節)対戦カード決定」
- Jリーグ公式サイト「2026年2月に開幕する特別大会の名称を決定 「明治安田Jリーグ百年構想リーグ」」
- スポーツ報知「エスパルスが7期連続黒字…25年度売上高は過去最高の53億円5300万円」(2026年4月28日、Yahoo!ニュース配信)










